Open Transactionsはビットコインを救えるか?
Open Transactionsをご存知でしょうか?
私は全然知らなかったのですが、どうやら2010年から開発されていて、ビットコインの世界の中ではかなりの古株プロジェクトです。ただし、開発者は開発途中でビットコインとブロックチェーン技術を発見した、というのが正しい順序のようですが。
今日はビットコイン(他の仮想通貨もですが)が抱える、手数料というかなり大きな問題点を指摘し、Open Transactionsがどのようにそれを解決できるか解説します。Open Transactionはブロックチェーン技術とは異質ですが、ビットコインへものすごい大きなインパクトを与える可能性があります。
ビットコインは高い!?
私が最初にビットコインについて勉強し始めた時、「ビットコインは手数料が安い」、「マイクロペイメントが可能に」、「高速決済スピード」などの強みがあると認識していました。
これは必ずしも間違いではなく、確かに既存の銀行システムなどと比較すると、安いし、速いし、非常にシンプルだと思います。ただし、ビットコインをしばらく使ったり、色々調べる過程で、必ずしもビットコインは安くはないという考えに最近近づいています。
現在のレートでビットコインの価格を4円だと仮定して、100円のものを買うのにビットコインを使った場合、実に4%が手数料でとられることになります。金額が大きくなればなるほどこの手数料は気にならなくなりますが、多数の10円単位のマイクロペイメントを実行しようとした場合、手数料は無視できなくなります。
私はCounterpartyが好きで、割と頻繁にCounterpartyをいじるのですが、Counterpartyに至ってはデフォルトでおよそ2倍(8円)の送金手数料がかかります。100人にCounterpartyトークンを送っただけで、800円もかかってしまいます。決して安くはありません。
ビットコインのブロックチェーンは、仮想通貨の中でも最も手数料が高いと言えます。つまり現状ではビットコインは必ずしもマイクロペイメントに向いていないのです。
(余談ですが、Rippleはビットコインより数倍~数十倍手数料が安いですね。)
現状の解決策は?
現実的な対策として、結局中央的なサーバーが使われることがほとんどです。
Coinbase、Bitstamp、国内の取引所、販売所も含め、自社サーバーを使いこのビットコイン手数料問題を回避しています。毎回毎回ブロックチェーン上で実際の資産の移動をしていたら、コストもスピードも見合わないからです。
また、このブログでも紹介したChangeTipなどもサーバーを使うことで、1円以下のマイクロペイメントを可能にしています。
ただし、現状のこの仕組みには限界(問題)があります。
中央サーバーを使って処理することで、せっかくセキュリティーが極めて高い分散型のP2P通貨というビットコインの特性・強みを消してしまうからです。
中央サーバー処理の問題点が最も大きく露呈されたのが、ご存知の通りMt. Gox事件です。世間にはよく勘違いされますが、Mt. Goxの失敗はビットコインとブロックチェーンの失敗ではなく、完全に既存のサーバーモデルの失敗と言えます。
要は、このままでは結局今までの中央サーバーモデルを脱却できず、高い手数料を受け入れて直接P2Pでやるか、妥協して既存のモデルのリスクを受け入れなくてはいけないことになります。
この大きな問題点を解決できる可能性があるのが、Open Transactionsです。
Open Transactionの仕組み
Open Transactonは複数のサーバー(Federated Servers)を使用し、サーバーの高速、低コストという利点を生かしつつ、分散的によりセキュアな取引を実現する仕組みです。
詳しくは以下のページの説明がわかりやすいかと。
Open Transactions / オープントランザクション - ビットコイン2.0 | Bitcoin日本語情報サイト
Open Transactionsの特徴として、
・取引処理連合サーバーには、資金へのアクセスの権利がないこと。金額を改ざんしたり、資金を持ち出すことはできない。
・MultiSigを使って、あなたの仮想通貨資金はサーバーの外に保管され、複数パーティの同意がないと引き出せないこと
・サーバーは取引記録の最新のレシートだけを保存し、残りは破棄されること(最新のバランスさえわかれば、残りは保存する必要がない)
・サーバー内で、匿名取引、スマートコントラクトなど様々な追加機能を使えること
などがあります。Open Transactionsには、ブロックチェーンもコインも存在しませんし、P2Pでもありません。開発者を引用すると、「ブロックチェーンは信頼するサーバーの存在自体を失くした。一方、Open Transactionsはサーバーを信頼する必要性を失くした」とコメントしています。
具体的なフロー
MultiSigアドレスに100万円相当のビットコインを送ります。今のレートで25BTCだとしましょう。仮に8 of 10のMutiSigを使った場合、自分を含む10人(自分とサーバー)のうち8人の同意がないと25ビットコインを引き出すことはできなくなります。この時にビットコインの送金手数料4円程度が発生します。
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取引処理サーバーはあなたのMultiSigアカウントに確かに25BTCが入金されたことを確認し、IOUをシステム内で発行します。これは複数の取引サーバーで共有されます。
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IOUを付与されたあなたはシステム内でほぼ無コストかつ、高速に他のIOUとトレード、売買が可能になります。他の仮想通貨IOUとトレードしてもいいですし、円IOUとトレードすることも可能です。
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もしサーバーが不正行為を行ったりトレードを上手く履行できない場合は、あなたは他のサーバーに切り替えることが可能です。いずれにせよサーバーにはあなたの資金へのアクセス権はありませんし、レシートは複数サーバーで共有しているので切り替えはすぐにできます。
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大量にトレードなどを実行した後、もし資金をシステムから引き出したい場合は8つのMultiSigの認証を通し、自分のビットコインWalletに送金してもらいます。トレードの結果次第では25BTCが20BTCになっているかもしれませんし、他のAltcoinで支払ってもらうことになるかもしれません。
基本的に以上のような感じです(ちょっとわかりづらいかも・・・)
重要なポイントは何千とトレードや、トランスアクションをしても、かかったのは基本的に最初の4円の送金手数料だけだ、ということです。(トレード量によりサーバー使用料も発生しますが、かなり小さいため今は省略)
Open Transactionの応用例
真っ先に思い浮かぶ応用例はビットコイン取引所への応用です。資金管理者と処理サーバーを分けることで資金の持ち逃げ、不正管理ができなくなります。
他にもChangeTipを含む、自社単独サーバーを使用しているサービスはOpen Transactionsを使うことでセキュリティーを向上させることができます。
具体的な技術、欠点、Rippleとの差、もろもろ
全て書くと長くなりますし、私の理解の範疇を超えている範囲もありますが、現状だと正直あまり大きな欠点は見えていません。Single point of failureである単独サーバーを複数サーバーによる分散的競争にすることで、サーバーの利点を生かしつつ、セキュリティーを向上させたと言えます。
Rippleと近いと感じるかもしれませんが、RippleのようにGatewayやサーバーを信頼する必要もありません。(詳しくは英語の比較記事を最後に貼っておきます)
まとめ
かなり長くなりましたが、ビットコインやCounterpartyなどの手数料やブロートの問題を解決する可能性がOpen Transactionsにはあります。Dappsの開発やモデル構築などにおいてもこの手数料問題はかなり大きなもので、私も個人的に色々悩んでいました。ゆえにOpen Transactionsには期待しています。
今回はいわゆるいいところしか話していませんが、もう少し調べる中で弱点や欠点なども出てくるのではないかと思います。その時はまた別記事で書いてみます。多分笑
もしOTについて詳しい人がいて、上記の内容に間違いなどありましたら是非ご指摘ください。レシート作成の部分であったり技術的なところはまだ理解が浅いです。
(ほとんどOTについて聞いたことがなかったのですが、みんな知ってるけど無視しているだけだろうか・・・。それとも知らない間にバックエンドで一般的になっているのだろうか。)
それでは。
参考リンク
WCN Live: Open Transactions -- Interview with Chris Odom, Johann Gevers - YouTube
Comparison of OT with Ripple, Paypal, and Colored Coins, with regards to Trust.