ビットコインダンジョン2.0

Bitcoin (ビットコイン)やブロックチェーンを技術に詳しくない人たちのために、面白おかしく、そして真面目に語ります since 2014

Defiの概要 特徴、メリットと課題を考える

今回は最近話題のDefi(Decentralilzed Financeの略)について、共通の特徴やポテンシャル、課題やリスクについて概要を話してみました。

同タイトルの動画をビットコイナー反省会の方で説明、考察しているので詳細に興味のある方は是非そちらをご覧ください。通常通りブログの方でも一部ポイントだけかいつまんで書いておきます。

 

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Defiとは何か

 
  1. 読み方は「ディファイ」。「デフィーじゃないよ」

  2. 最近注目されている気がするけど、実際これは何か新しいものではなく、以前からあった様々なブロックチェーン上のプロジェクトやコンセプトに名前をつけたもの。その点では何かいきなり新しいものが出てきたわけではない。(まあ名前がつくのは重要だけど)

  3. Defiの特徴として、「信頼が必要なMiddleman(中間に入ってくる機関)がいない、もしくはMidllemanを極力排除しようとしている」というものが大きい

  4. 例えばDefiの一種であると考えられているDexの場合、取引所などの信頼を必要とする主体がなくても、秘密鍵を保有するユーザー同士で分散取引、似たようなトレード機能を直接利用することが出来る。
  5. Fintechなどは銀行やMiddlemanの効率性をテクノロジーで改善していこうという流れに対し、Defiはブロックチェーン技術、特にスマートコントラクトを利用することでMiddlemanをそもそもなくして同様の金融サービスなどを提供しようとするもの

  6. Defiの定義はまだ完全に決まってはないが、「Dex(分散取引所)」「P2P lending」「Stablecoin(価格の安定したコイン)」「Prediction market(予測市場」「Security token(証券のブロックチェーン上でのトークン化)」などが入ると主に考えられている

 

Defiのベネフィットとポテンシャル

 

下記のようなものが考えられている/主張されている

  1. 誰でも参加できる(オープン、本人確認など不要で使用可能)
  2. ブロックチェーン上での自動執行による低コスト化、高効率
  3. 検閲耐性
  4. 検証可能性/透明性

 

Defiのベネフィットやサービスの詳細などは他の記事などですでに色々日本語でも情報が出ているので、こちらの記事などを読んでおけばよいかと。

 

lab.stir.network

  

 
Defiの課題、限界は?
 
 
  1. 誰でも参加できる、オープン性が大きなベネフィットとして挙げられるが、ここはすでに検閲や規制が入っている領域も多く、今後もDefiのオープン性の特徴が規制などにより限定されてしまう可能性
  2. 例えば、すでにDexやSecurity tokenはKYCを導入し、一部のユーザーしかアクセスできないようにする動きも出てきており、オープン性が損なわているという批判も出来る
  3. 誰でも参加できる反面、預託金(事前にEtherなどを預ける)必要性があるため、伝統的な金融などに比べて高い利率を提供していけるか、参加する投資インセンティブなどが十分なものになるかは微妙(MakerDAOに関してはこちらの考察記事なども参考)
  4. また、本当に低コスト、高効率化につながるかはまだ微妙にわからない部分も。特に規制の対象になればコンプライアンスのコストなどは下がらないのと、ブロックチェーン技術の進展がないと、高いTx手数料などの問題で低コスト化にはまだつながっていない。
  5. Middlemanはいないといったがオラクルなど信頼のポイントはDefiプロジェクトの多くにいまだに存在する
  6. また、ブロックチェーン金融アプリケーションの複雑さが増していき、その一方預託金の規模が大きくなってくると、The DAO事件のようなハック事件や意図しない形で資産が凍結されて動かせなくなったり、などの事故が起きる可能性も。信頼がなくなったわけではなく、コードへの信頼や、関連トークン発行者への信頼などに変わっただけ。
  7. (事故が起こった時に特定のトランザクションのロールバックなどが検討されてしまった場合、それは果たして今の仕組みと何が違うのか、という批判も)
 
DeFiの見通しや個人的感想
 
  1. DeFiという考え方は面白いし、ブロックチェーンとの相性も比較的いい、多様なプロジェクトが出てきていて単純にすごいと思う(が、別に自分の金融に対する知識が深いわけでもないのもあり、自分自身はそこまですごくハマっているとかはない)
  2. 金融サービスへの参入障壁を下げられるのが一番期待している。規制ヘビーな先進国ではなく、発展途上国の人たちが先に使い始めるなどの現象が起きたらすごい面白い。
  3. ただし先進国のユーザーが使うことを想定しているようなサービスは今の集権的なものといずれ大差ないような状況になってしまう気もする。
    1. Dexやセキュリティトークンなど
  4. 将来的にどうなるか?
    1. 先進国では多分規制が厳しくなってきて、本来の効果が発揮しづらく方向性に行くのではないか。
      1. Defiが完全にCentralizedなFintechを置き換えるとは思わない。(StablecoinをDefiに含むとするなら、銀行などの集権的な機関がDefiを組み込んでいくことはありえるが)
    2. まだまだ色んなサービスが出てきそうだし、利用自体も今後増えていくのでは?(Daiやその他のLendingサービスなど)
    3. 同時に何かしらの事件や事故は規模はともかくそのうち出てきそう。そうなった時にプロジェクト、もしくはプロトコルがどのような対応をするのか、に興味がある。
  5. オラクルの問題やコントラクトセキュリティの監査などの研究は進んで、その内本当に分散金融と呼べるレベルのものが実現するのかもしれない。
    1. ただし今は無駄なトークンが組み込まれていたり、スケーラビリティーの問題などもあり、過渡期とも思う。しばらくは(2~3年)そんな感じが続くのでは。

フルノードの重要性とフルノードが広がった世界について改めて考える

昨日ビットコイナー反省会の方でフルノードに関してなぜ改めて最近自分はその重要性をすごい感じているのか、今後フルノードの役割がどのように変わっていくか、などについて動画で説明しました。本当は10分強くらいで話すつもりだったのですが、結構熱く色々話していたら25分以上と長くなってしまったので、要点はブログでもまとめてもおきます。

 

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フルノードとは?

 

  • 全てのブロックとトランザクション情報をダウンロードして、検証するノード(コンピューター)
  • 他にもフルノードはトランザクションをリレーしたり、ネットワークの分散性や検閲耐性を維持する上で非常に重要な役割を果たす
  • フルノードを自分のPCで立てる人もいれば、Raspberry piのような専用の端末を用意する人もいれば、開発用にAWSやAzureなどクラウド上で立てる人たちも
  • フルノードは全ての履歴を持っていて、自分で検証する、というのが重要
  • よく「Don't Trust, Verify」とか言われることがあるが、(基本的には)フルノードになることで誰も信頼することなくトランザクションなどを検証して分散性を保つ、してというのは、フルノードを自分で建てる前提である。
  • (フルノードに関するもう少し詳細な解説はこちらの記事などを参照

 

一般ユーザーがフルノードを立てるメリットは?

 

  • プライバシーの向上

    フルノードを自分で立てているユーザーが少ないと、Monacoinのノード伝播の仕組みを利用したIPアドレスの特定手法、など犯罪者などでなくてもプライバシーが侵害される可能性が。

  • 第三者を信頼しないで自分でTxを検証可能。セキュリティーの向上

  •  ネットワーク参加、ネットワークへの意思表示

    ビットコインとビットコインキャッシュ、SegWit2x、UASFの時なども、フルノードが支持するチェーンを表明出来たりするだけでなく、特定のブロックの伝播を拒否したりすることで、分裂時などにおいて一定の方向付けや役割を果たすこともある。

  • 逆に言うと、フルノードを立てる明確なメリットは他にはなかった⇒が、それが新しいレイヤーの出現などで少しづつ変わってきている(後述)

 

フルノードを立てるのが困難になるとどうなるか?(Ethereumのケース)

 

  • Ethereumはビットコインより多くの情報を記録する必要があるため、フルノードの肥大化のスピードがビットコインより比較して早く、最新状態にノードを同期するのが難しくなってきている。

    単純なディスク容量の問題ではなく、署名の検証と最新Stateへの同期が主な課題。通常のスペックのPCやクラウド上でも、最新Stateに中々追いつかない状態が頻発している。SSDなどを使えばいいがコストがどんどんかさんできている。

    (これはArchival node(1.5テラ)の問題で、Fast syncのフルノードは大丈夫!という人もいるが、Full nodeでもかなりきつくなってきているという話を自分はよく聞く)

  • フルノードを自分で維持するのが難しくなると、結局Infuraなどよりリソースを持っている第三者を信頼する必要があり、分散性、検閲耐性が損なわれる

    そもそもそれなら最初からクラウド、コンソーシアムチェ―ン、Private chainでいいじゃないか、問題が発生しかねない

  • ここら辺については、The Blockの記事でよくまとめている記事があったので、詳しくはそちらで。


フルノード立てるのは難しくなってきているのか?

 

  • コインによる。
  • ビットコインのフルノードの数は微増傾向で今合計一万ほど。一方Ethereumは数え方次第の部分はあるがこの1年でもかなり減った。
  • 最近だとBTCPayserverなど誰でも割と簡単にクラウド上でビットコインノードを構築できるようになってきている
  • 他にもCasa Nodeなどノードをパソコンなどにぶっさすだけで使えるボックス型のノードみたいなものも出てきており、比較的安価に具体的知識不要でフルノードを持てる環境が出来ている。(端末は1万円程度)
  • EOSなどはEthereumよりさらにサイズが大きくなっていくので、フルノードを立てられるのは事実上Block Producersのみ、などになると思う。元々EOSはBPへの信頼で成り立っているので、これは設計通りでもあるが。

 

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(Coin.danceのビットコインフルノード数の推移データ) 



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(The Block集計のビットコインとEthereumノード数の推移比較)

フルノードがなぜ改めて重要だと最近思っているか?

 

  • フルノードが重要という話は以前からあるし、ある程度詳しい人なら特に違和感はないと思う。なぜ今さら注目?
  • 今までフルノードを立てるメリットやインセンティブがあまりなかった、と言われていたところから、だんだんこのフルノード運用のインセンティブ構造が変わってきているから。

具体例 Lightning Network


* Lightning NetworkではNetworkというように、LN上でビットコインを経由するフルノードのネットワークが非常に重要になる。

* また、Lightningのユーザビリティの課題の一つに、トラストレスに運用するにはユーザーは常にオンラインでいなくてはいけないこと。また、オンラインではないと支払いの自動受け取りが簡単に出来ない、などの課題がある。

*これらの問題は仮に全員がフルノードを持っていたとしたら容易に解決できる問題だが、フルノード構築や維持は面倒なので、自分はこの世界線は今まで来ないと思っていた。

* ただし、LNのフルノードになることで、前述したプライバシーの改善だけでなく、LN上のビットコインのルーティング手数料を稼げるようになる。それだけではなく、フルノードを常に自前でオンラインにしている場合、ルーティングの手数料だけでなく、例えばオンラインの広告を見る代わりに自分のフルノード向けにマイクロペイメントが少しづつ自動的に振り込まれたり、LN上の新しいサービスや収益化の恩恵を預かりやすくなる(これはフルノードなしでも可能ではあるが、サービスの幅が狭くなったり、中間業者を信頼したり、費用を払わなくてはいけなくなると思う)

* 要はよくわからなくても、とりあえずLNのフルノードを立てておいた方がエンドユーザーとしても経済的なメリット、インセンティブが大きくなってくれば、自然とフルノードを立てる人が増え、フルノード保有を前提とした多様なサービスが広がる可能性。インターネットのルーターみたいなイメージで、最終的にはスマホみたいな小型端末に最初からビルトインされたりもありえる

まとめると、Lightning networkの利用が広がってきた時に、Lightningに対応しているフルノードを自前で立てるか、もしくはCasa nodeみたいなものを買ってくることで、実は何かしらの収益がスムーズに入ってくるような日が来る気がしている


*Lightningの他にもProof of StakeのコインでStaking報酬を得る為にフルノードを構築したいという需要も出てきており、それに対応するサービスや市場も出始めている。利子収入みたいなのがみんななんだかんだ好き。(昔からクラウドマイニングが好きな人多いのもこの辺) 

 

まとめ

  • 自分は一般の人がフルノードを運用しよう、みたいな日はほぼ永遠に来ないのではないか、と思っていたが、ここ最近自分の意見も変わってきている部分があり、フルノード維持のインセンティブ構造が変わってきたことで、広くフルノードを持つ人が増えるのではないか、と思ってきた。

  • フルノードがもっと一般的に使われることで、長期的に見てよりトラストレスで自由な基盤やサービスを広げる前提となるし、単純にそちらの方が自分の信条、思想とも近いし、是非そういう流れを推進したい。

  • 偉そうなことを言っているが自分自身も今フルノードを構築、運用していないので、今月~来月くらいにネット環境なども整えて再チャレンジしようと計画中(それに関してまた何か情報を共有するかも)

  • ちなみに、ビットコイン、Lightning Network、Liquidサイドチェーンの具体的なノードのセットアップ方法などは、大石さんがかなり前からビットコイン研究所内のスタートアップマニュアルみたいなものでわかりやすく手順や概要を説明してくれているレポートがすでにあるので、興味のある人はそれを見るのが一番良いと思う(有料グループです)

 

2019年暗号通貨業界のトレンド予想

昨日ビットコイナー反省会で年始の予想特別放送をしました。結構想定した以上にリアルタイムでコメントや質問も来て、かなり真面目に回答しているものも多かったです。詳しくは動画で見て欲しいですが、その中で重要なものに関しては一部ビットコインダンジョンの方で記事にもしておいて予想しておきます。いつも通り年末に答え合わせしましょう。ちなみにこういう予想は当然当たらないことの方が多いですが、年始の時点でどういう風に考えていたか、どういう根拠だったか、というのを残しておくのは非常に重要だと思います。

 

ちなみに他のリサーチャー含むより詳細な予想や論点に関してはビットコイン研究所の方でレポートにして来週公開予定なので、是非そちらも確認してください。

 

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Liquidによる取引所送金は盛り上がるか?

 

BlockstreamのサイドチェーンソリューションLiquidに関してはこちらの記事でトークンプラットフォームとしてのLiquidについて詳しく考察しました。

 

今年はLiquidの利用がどこまで進むと予想されるかですが、個人的には取引所内で一部のユーザーがヘビーに利用しかなり便利になる。Liquidを採用する取引所も拡大する。ただし、取引所外でのトークンプラットフォームとしての応用、決済手段としての流通などは今年はまだ限定的だと思います。大部分のユーザーは取引所から資金を引き出さないですし、ビットコインそのものじゃなくLiquidで引き出して保存するのにもある程度の教育と、関連ツール(ウォレットなど)の改善などが必要です。ただしLiquidの匿名性の高い送金はかなり便利なので、一部のヘビーユーザーはたくさん使う、というのがLiquidに関する今年の現実的な目標値だと考えています。

 

日本のホワイトリストに新しいコインは載るか?

 

これは載ると思っています。というより常に新しいコインが出てきて、力関係もすぐに変わるこの業界においてこの許可制の「ホワイトリスト」制度自体に問題があると思っているのですが、今年は少なくともいくつか新しいコインが追加されると思いますし、それがないと日本の取引所、市場の世界での存在感はさらに薄くなっていくと思います。

 

2019年末のマーケットキャップtop10はどのようなコインになると予想されますか?

 

順不同ですが、

Bitcoin, Ethereum, XRP, Bitcoin Cash(ABC), EOS, Tether, Litecoin, Binance Coin, Stablecoin(どれか新しく一つ)、Monero、ですかね~。予想案外難しいです。後はDfinityとかその辺が結構来るかもしれないですが、Top10に入るかどうかは微妙ですね。

 

セカンドレイヤーは今年は来るか?

 

かなりざっくりした質問ですが、セカンドレイヤー(Lightning,Plasmaなど)は今年来るか、という質問は結構もらいます。逆に言えば去年は想定したよりセカンドレイヤーあまり来なかったよね、という認識だと思うのですが、実際は開発コミュニティーなどは大きく盛り上がっており、開発アクティビティもかなり活発でした。それが今年ユーザー層まで降りてくるか、という質問だと思いますが、Lightningに関して言えば取引所での一部扱いや、ユーザーが使えるミニマルなプロダクトなどは今年中に起こると思っています。まだ今年いっぱいでは広く使われるところまでは多分行かないですが、急速に広がる土台が出来てユーザーも付き始める感じでしょうか。

 

Plasmaなどはまだ実装や実利用まではまだまだ時間がかかる印象で、今年も開発やリサーチは進むと思いますが、実際に意味のある形で機能するのにはまだ時間かかるでしょう。

 

Ethereumは今年無事PoS移行するか?

もう何年も噂されてまだ実行されていないEthereumのPoS移行。かなり勘による部分が多いですが、今年は新型ブロックチェーンとの競争などの要因もあるので、ついに実現すると思います。

 

その上で最初の方は上手くいった感じに見受けられ、市場でも好感されるのではないかと思いますが、個人的な中長期の見立ては必ずしもポジティブでもありません。が、それはおそらく19年以降の議論、問題になるかと思います。

 

ETH vs EOS

最近聞かれることの一つに、EOSはEthereumと比較してどうですか、というタイプの質問。今年は力関係ではEOSはアプリケーション数が増えたりなどして、相対的な力関係ではEOSが少し押してくる形になると思います。同時により長期で見ればEthereumとEOSでは特性とターゲットにすべきユースケースが違うので、今年後半にかけて単純比較からすみわけ云々という議論も増えるでしょう。EOSに関しては広がると同時に課題面も色々露呈されると思います。ガバナンスやBlock Producers投票に関する批判や形骸化、ノード維持費増加によるBPの離脱、などです。

 

 

今年もハッキングはあるか?

規模、国内かどうかは知りませんが、あります。今の時点ですでに HitBTCやばそう、という噂もあったりしますね。

 

今年ブロック男は結果を出すか?

出します。頑張りましょう笑

 

 

というわけで、他にもビットコイナー反省会の動画の方ではもう少しざっくばらんに色んな質問に回答しています。またもう少し細かい考察や根拠などは他のメンバーの意見も含めてビットコイン研究所の方で書いて公開するので、そちらを是非見てみてください。