ビットコインダンジョン2.0

Bitcoin (ビットコイン)やブロックチェーンを技術に詳しくない人たちのために、面白おかしく、そして真面目に語ります since 2014

SegWit2x反対世論の攻勢の始まりとフォークの是非について

先日SegWit2xの最新状況に関して動画で解説したのですが、一部補足とまたさらに新しい情報がいくつか入ってきているのでブログの方でも一部アップデートします。

 

www.youtube.com

 

上記の内容の要点ですが、

  1. SegWitx2xが予定している「オプトインリプレイプロテクション」は、ユーザーや事業者に能動的な行動を強制するようなメソッドで、ユーザーの資金喪失リスクや取引所もGox、訴訟リスクなどにさらされ、批判が多い(技術的詳細についても二転三転しているような状況)
  2. リプレイプロテクションの不在もあり、取引所や事業者の中にはSegWit2xに反対するところが出てきており、BitfinexはBTCというティッカーは2xには使わないことを発表すると同時に、2xコインの先物市場を導入。
  3. これが一種の予測市場のような機能を果たしており、2xコインの市場の支持率を図る一つの指標となっている。(なので要チェック)
  4. 一方、XAPOなどのNYA署名企業はハッシュパワーが大きい方を正のBitcoinとして採用するという告知をしており、賛否意見が割れている
  5. ハードフォークが実際に起きてしまうと、リプレイプロテクションの不在による資金喪失、取引所が攻撃される/訴訟される、送金の承認時間が異様に長くなる、開発者が大量にコミュニティーを離脱する可能性など、それらによる価格の急激な下落可能性など正直誰も得をしない気がする
  6. 一方、2xがグダグダになるとBitcoin Cashへ移動するマイナーも出てくるのでは
  7. 2xとは直接は関係ないけど、Bitcoin Goldが10月25日にどさくさに紛れてハードフォークする、って言っているようだけど、正直開発もやる気あるかどうか微妙だし、期待できるようなものではないと思う。

 

という感じです。さて、ここ3日くらいでもまた動きがあったので一部補足しつつ、ビットコインのフォークに関する自分の雑感を述べます。

 

SegWit2xに明確に反対する企業、コミュニティーグループの出現

上記の動画の作成後に、複数の企業やグループが明確に2xに反対する表明を出しており、いよいよ2x反対包囲網が貼られて静観から動き始めたような印象を受けます。

 

具体的には主要取引所の一つであるBitmexが、リプレイ&ワイプアウトプロテクションの不在状態でのフォークコインの不支持を表明。また、韓国のソウル最大のユーザーグループである(らしい)Seoul Bitcoin Meetupもブログでユーザーコミュニティーとして正式に2xに反対する表明をしています。

 

一部の過激派(?)を除いて、今まで企業などで2xハードフォークやリプレイプロテクションの不在を批判するような声はそこまでなかったのですが、公式にSegWit2xに反対する声が出てきたのは非常に重要なトレンドだと思っており、おそらく来週以降も似たような動きが続くと自分は予想します。


なお、主要企業による2xへの姿勢のまとめリストは先日Coinchoiceが新しいページを作っていたので、このリストで最新状態を確認できると思います(編集部にプレッシャー笑)

11月にもビットコイン分裂?NYAに合意した企業一覧 | Coin Choice (コインチョイス)

 

ビットコインのハードフォークに対する誤解?

というわけで、来週も賛成派、反対派、それぞれ新しい動きが出てきそうですし、いよいよ11月のハードフォークの危機が日に日に近づいて来ており、また盛り上がりそうです。緊張感も高まってきてますが、一応自分は前々から予想している通り、2xのハードフォークは結局起きない、という予想のままです。

 

なんですが、今回のフォークに関して気になっていることがあり、このフォーク論争をどのように捉えるべきか、という話です。

 

人によっては、「ビットコインはこうやって分裂し続ける」「使い物にならない」「分散化とは何だったのか」みたいな意見の人もいると思いますし、今回の一連の動きはビットコインにとって確かに大きな脅威/リスクであることは間違いないと思います。

ただし、ビットコイン(及びその他のオープンソース暗号通貨)には、元々誰にでもハードフォークをする権利というものが存在し、コア開発者が嫌いでも、ロゴが好きじゃないでも、どんな理由でも関係はないのですが、いつでも簡単にビットコインをフォークして自分の好きな変更を加えることが出来ますし、SegWit2xの結果に関わらず今後もビットコイン、またイーサリアムなどでも色んなフォークバージョンを作成する動きは出てくると思います。新しいアルトコイン生成手法の一つとも言えるかもしれません。

 

なので本来は「ハードフォークされてしまうこと自体が問題」なのではなく、「ハードフォークをしたり、プレッシャーをかけることでネットワークを混乱させたり、攻撃したり、場合によっては悪意のある人がネットワークを乗っ取ったりすることができる」可能性の方が問題です。マイナーやユーザーの利益追求や合理性に基づいて一つのチェーンに収束し、ハードフォークをしまくってネットワークを飛散させるインセンティブが欠如していること、がビットコインのセキュリティーの源泉になっているはずだからです。(「べきだから」です)逆にハードフォークをすることが出来ないのも(クローズドソースだったり、開発者や一部投資家がコインの大部分を保有していたり、等)、それはそれで集権化だったり、別の問題を抱えているとも言えます。

 

なので、自分はハードフォークすること自体は特に反対ではないのですが(2xハードフォークは無意味だとも思ってますが)、ハードフォークが起きるからダメなのではなく、経済合理性に基づかないハードフォークの危機や内外からのプレッシャーにビットコインが折れることの方が懸念ですし、逆にいくらハードフォークしようがそこさえ上手く機能していれば中長期的には1つの主要チェーンに収束していくはずなので心配ではないです。

 

むしろ、Bitcoin Cashのケースのように、考え方の違う派閥がハードフォークをしていくことで、Bitcoin(レガシーチェーン)、Bitcoin Cash(新チェーン)合算の市場評価がフォーク前より上がったり、内部で膠着状態が続くより同時並行で競争していくような形になり、結論としていい結果を生み出すこともあると思います。
(自分は以前はハードフォークはしないで欲しい派だったのですが、Bitcoin Cashのハードフォークは双方にとって良かったんじゃないかと今は考えてます)

 

というわけで、2xハードフォークによるエコシステムや相場の混乱の緊張感もありますが、界隈の企業、開発者、ユーザー、トレーダー、それぞれが合理的に行動するのか、どのような判断をして、どういう結果になるのか、ビットコインの打たれ強さを試すための格好の機会とも言えるので、興味深く様子を見守ってます。まあ場合によっては自分も大きな金銭的損失を出したりとかもありえますが、もうそこらへんは感覚がマヒしてますし、どうでもいいですw

 

それでは。