ビットコインダンジョン

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SegWit2xのハードフォークが起こらないと考えられる理由(SW2x展開予想)

さて、「やるやる」「Soon tm」と言って結局全然やれてなかったのですが、とうとう観念してSegWit2xについて少し考えてみたので、現在時点での自分の考えと見通しを簡潔に共有しておきます。(中国の状況がより明確になったり、新たな動きが出てきた時点でおそらくまた別に記事を書きます)

 

時間がかかった背景に中国でのゴタゴタに大分意識をとらていたのと、まだ不確定要素が多く、ある程度自信のあるレベルで状況を読み切れないというのがあったんですが、一応今のうちでの予想と自分の考えを書いておきます。

 

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(8月1日にフォークがあったと思ったら、また11月にもフォーク可能性ありという…)

 

以下が今のところの自分の予想です。

11月のSegWit2xのハードフォークは起こらない。SegWit2xのハードフォークブロックサイズ引き上げを強力にプッシュしている陣営はBitcoin Cashに流れる。

 

以下にポイントと自分の予想の根拠を説明します。

7月時点での予想

7月17日の記事で、8月1日に控えていたUASFやその後のSegWit2xの動きについて実はすでに8月以降の予想もしており、

  1. 8月1日のUASFは回避される→合ってた
  2. SegWit2xの2xハードフォークは起こらない→これから

と予想していました。この記事を出した後に少し予想外であったBitcoin Cashの提案があり、ご存じの通り8月1日に実際にハードフォークが起こり現在BitcoinとBitcoin Cashの二つにネットワークが分裂して両方とも稼働している状況です。

 

11月の2xのハードフォークが起きないとこの時点で予想した根拠は、SegWitがアクティベートした時点でSegWit2xの目標は達成されたに近い、コア開発者の支持が得られない、ハードフォークを急いでするリスクをとる意味がないなどの議論が起きて結局2xの結束が乱れハードフォークも起きない、というものです(現在進行形でこんな感じの展開になっていると言えます)

基本的にはまだこの予想通り、2xのハードフォークは起きないと見ていますが、斜め上の角度からBitcoin Cashが生まれたことで7月時点の予想とはちょっと違った展開になってきています。


中国の状況はとりあえずスルー

中国の状況はまだ現在進行形で噂が飛び交っている状態で、中国国内の取引所を停止するというのは固まりましたが、それに続いてマイニング事業自体を停止させる、ビットコインネットワークへのアクセスを禁止させるなどの噂が流れています。

 

SegWit2xの未来も、中国がマイニングを仮に完全に禁止するのか(Antpoolの廃業など)、それともビットコインをコントロールするために「国有化」のような形にするのか、それともただの噂話なのかなどで大きく変わります。予想が難しいので現状維持で行くとこの記事では仮定します(おそらくそれが向こう数か月で一番まだ確度の高いシナリオ)

 

SegWit2xのハードフォークが11月に起きないと予想する理由

SegWit2x陣営の指揮の乱れ

SegWit2xのハードフォークが起きないと考えている主な理由の一つに、2x陣営の結束は必ずしも固くなく、F2Pool(10.5%のハッシュレート保有)などすでに離脱を表明している企業が複数出てきており、今後も離脱する企業、プロジェクトは増えていくと想定されるからです。2xを離脱した陣営がBitcoin(Core側)にジョインしていくのか、別の方向性をとるのかは分かれると思いますが、SegWit2xキャンプというのは一枚岩というのには程遠いという状況は意識する必要があるでしょう。

 

また、あまりスポットライトはあてられませんが、Bitcoin Cashを元々提唱したのはViaBTC(現在BTCのおよそ8%、Bitcoin Cashの20%ほどのハッシュレートを保有する中国のマイニングプール)であり、BitmainはViabtcへ投資しておりかなり密接に連携していることから、Bitcoin Cashも裏ではBitmainが糸を引いているのではないか、という噂もあります。Bitcoin Cashのハードフォークの提案が出た時点で少なくともViaBTCはSegWit2xの約束を破ったとも見ることも出来ますし、参加企業やマイニングプールの結束が元々固かったかも非常に怪しいです。

同時に、Bitpay、Shapeshift、Rootstockなど、まだ2xを強力に推進している企業や影響力を持つ人物も存在するので彼らの動向には引き続き注視すべきです。また、BitmainのJihan Wuも少なくとも公式のイベントではSegWit2xを支持する発言をしています。(同時にCashも明らかにかなり押しているので、ダブルスタンダード的にはなっていますが)

SegWit2xハードフォークのメリットがほぼなく、デメリットの方が多いこと

もう一つの根拠に、SegWit2xのハードフォークのリスクやコストなどを考えると、ハードフォークをする必要性があまり存在せず、デメリットの方が多いと考えられるというものがあります。


すでにSegWitが8月に起動されたことで、ビットコインブロックチェーンの混雑問題も(一時的ですが)軽減されてきており、またSWが入ったことでライトニング、シュノール署名などセカンドレイヤースケーリングや、トランザクションの最適化などを進めることがついに可能になりました。

仮に11月にハードフォークしてブロックサイズ制限を2倍に引き上げたとしても、オンチェーンキャパシティーが劇的に改善されるわけでもなく、ライトニング、サイドチェーンの開発などを通して根本的にアプローチを変える必要がある、もしくはオフチェーンでのスケーリングソリューション開発が必要になるのは変わりません。2xハードフォークは焼け石に水状態とも言えます。

 

また、開発力不足も度々指摘されており、SegWit2xの開発はほぼJeff Garzik一人にゆだねられてしまっているような状況です。しばらく全く開発に進捗がなかったり、開発力不足や開発コミュニティーの貧弱さを指摘されています。

もし実際にSegWit2xハードフォークが実行されて、現在のビットコインがさらに2つに分裂(Core BTC&SW2x BTC)したり、もしくはSW2x BTCがハッシュパワーでCoreBTCを完全に置き換えたとしたりしても、その後SW2xのBTC1クライアントの活発な研究や開発が進むこともあまり期待できません。SW2xがデファクトのビットコインになったら、開発コミュニティーを去ると公言しているコア開発者も出てきています。

 

また、ハードフォークによるコストというのは単純にネットワークの分裂リスクや開発者の離脱だけではなく、取引所やウォレットプロバイダーへの対応にかかるコスト、ブランディングの混乱によるネットワーク効果の棄損など外部的にかかってくるコストも存在します。特にSegWit2xはリプレイプロテクションを施さないと宣言しており、これはユーザー資金の喪失などの事故が頻発するリスクがあったり、対応を余儀なくされる取引所やウォレットプロバイダーへの大きな負担など間接的なデメリットも多いです。

Bitcoin Cashの存在 

そして、ある種最も大きい要因がBitcoin Cashの存在でしょう。

 

SegWit2xというのは元々、停滞していたSegWit導入を進めよう、8月1日に迫っていたUASFのリスクを回避しよう、というコミュニティー内の多くの企業の「善意」により一つの妥協案として提案されたものだと自分は認識しています。SegWitを導入することでCore開発者や支持者いわゆる「スモールブロック派」の希望を実現させ、同時にハードフォークによるブロックサイズを引き上げることでオンチェーンでのビットコインスケーリングを主張するいわゆる「ビッグブロック派」も懐柔するという形です。

 

ただし、予想外に8月1日にオンチェーンスケーリングを標榜するBitcoin Cashがハードフォークして誕生したことで、ビッグブロック派が属する派閥、コミュニティーがすでに出来上がってきています。


元々(かなり単純化していますが)Big block派とSmall block派の妥協・懐柔案であったSegWit2xの特に2xハードフォーク部分は、それゆえにすでに意味のなさないものになっており、もしオンチェーントランザクションの手数料削減などを推進したいのなら、ブロックサイズをすでに8MBまで引き上げているBitcoin Cashに行けばいいし、そこで現状のBitcoinとフェアに競争する方が意味が通っています。

 

つまり、SegWit2x派が善意で期待した、両陣営を懐柔しながら、Core開発者の開発リソースは保持し、一つのコミュニティーとして前進していくという理想の展開はもうこの時点でとっくに不可能になっており、ビットコインコミュニティーは主張や思想の違いですでに二つに分かれており、どっちつかずのSegWit2x派を作る必要性があまりありません。

SegWit2xハードフォークが実行されて誰が得をするのか?

上記のように見ていくと、SegWit2xのハードフォークが実行され、ビットコイン(BTC)がさらに二つに分裂するのはユーザーも事業者も本来は望んでないですし(特にSW2xは分裂時の混乱を避けるためのリプレイプロテクションを施さないことも公言している)、分裂後のSW2xを推進していく開発コミュニティーも現状ではほぼ存在しません。

また、SegWit2xハードフォーク後、SW2xがハッシュパワーと取引所の支持などを上手く利用し、完全にCoreを置き換えて一つのネットワークに収束したとしても、オンチェーンスケーリングの効果は部分的ですし、その時点でBTCを支えるコア開発者はコミュニティーを去る可能性が高く、ユーザーからの信任も失墜、価格の暴落などが起きる可能性も少なからずあると自分は考えています。


そのように考えるとSegWit2xへのハードフォークというのはどう転んでもあまりマイナー、ユーザー、事業者へのメリットや合理性があるとは思えず、政治的な理由や企業間で結んだ約束を遵守する、このまま引き返せない、的なメンツの問題になってきている様相すらあります。


それでも11月にSW2xハードフォークが強行される可能性は当然ありますが、現時点での自分の予想はコア開発者に不満を持つ、どちらかといえばオンチェーンスケーリングを主張しているSW2xの主要マイナー(特にBitmainやViabtc)がBitcoin Cashへの移動を11月以前に発表して、SW2x陣営が結局崩壊するという展開の方が確率は高いかな、と予想しています。  

 

(これ以外にもCore開発者の追放が最初からの狙いだとか、一種の陰謀論というかBitmainやBitcoin Cash側からの攻撃シナリオ、逆にCore側からのBitcoin Cashへの攻撃シナリオみたいなのも考えたのですが、あまり具体性や現実可能性が高くないのでここでは割愛)

 

では、自分の予想通りことが進行して、11月前のどこかのタイミングでBitcoin Cashに大きなハッシュレートが傾き始めたらどうなるか?このトピックはこれだけでもかなりボリュームのある記事になりそうなので、これは別の記事をまた書こうと思います。
 

今の時点で言えるのは、これはBitcoin Cash派にとっては少なくとも短期的にはかなりの追い風になるでしょうし、Bitcoin派にとってはかなり苦しい展開が待っているのかもしれません。それがビットコインエコシステム全体、暗号通貨全体にとってどのように影響するのか、は考察や議論の余地があると思います。