ビットコインダンジョン2.0

Bitcoin (ビットコイン)やブロックチェーンを技術に詳しくない人たちのために、面白おかしく、そして真面目に語ります since 2014

長期保有を検討する上で知っておくべき、Sound Moneyとしてのビットコイン理論

 

さて、ご存知の通り暗号通貨マーケットが死んでますね(今年何度目でしょうか)

 

年始の時点で一回BTCの価格が5000ドルくらいまで落ちるのではないか、と言っていたので、5000を切るのは特に驚かなかったのですが、4000ドルを切って今3700ドルくらいです。さらに、ここからもしかしたらさらにもう一段階落としていく様相を見せています。関係者の想定より下げ圧力が強かったのと、厳しい相場が少し長引きそうです。

 

アルトコインに至ってはビットコインよりさらにひどい状態で、17年に国内外で大きく盛り上がった「仮想通貨」市場ですが、昔はあんなに盛り上がっていたアフィリエイトやブロガーも息をひそめ、仮想通貨はオワコン、とか言われていますね。(これも今年何度目か)

 

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 (Coingeckoで一覧を見てみると惨状がわかります…)


ただし、残っている人はまだうろうろ残っていますし、今年に入ってからの下落局面で仮想通貨の終結を結論付けるのは近視眼的です。個人的な経験としても2014年~15年は同じような下落局面が長く続き、「ビットコインは終わった」とかいうのはもう聞き飽きているわけで、その裏で開発や浸透が進んでいたのを知っていたのでそこまで大きな心配はなかったですし、あの時は絶好の買い場になっていたという面もあります。

 

とはいえ、今まで大丈夫だったから今回の下落も大丈夫だろう、というのはさすがにちょっと浅はかすぎるとも思います。中長期で考えてなぜビットコインを買うべき(もしくは買わないべき)かを判断する為のもう少しちゃんとした判断材料や仮説が必要でしょう。

 

その中で、今年に入ってから公開された経済学者のSaifedean Ammousさんが書いた「The Bitcoin Standard」(英語)という本で、ビットコインがなぜ重要で、今後も価値を持ち続けるか、ということについて整理した本が「ビットコインとは何か」ということを考える上で非常に興味深い教材になると思いました。

今回はその内容を一部紹介しつつ、なぜ今の短期的下落に関わらずビットコインの長期的価値は棄損されないと考えられるか、ということについてまとめてみます。

 

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ビットコインとSound Money理論

 

この本の前半部分は貨幣の歴史や特性、Sound Money(日本語翻訳は難しいのですが、「正当なお金」もしくは「健全なお金」とでも言いましょうか)とは何か、ということについてかなり多くのページを割いて考察しています。Sound moneyは今の円やドルなどの法定通貨、中央銀行などの判断により価値の裏付けなしで発行が可能なFiat moneyとの対比となっています。

 

細かい部分は自分で是非直接読んで欲しいですが、ビットコインに関連した部分だけ抽出するとしたら、Sound Moneyとしてのビットコインとして重要なのは、

 

  1. インフレーション耐性があること

    Sound moneyもしくはStore of Valueとして重要な要素の一つとして、生産できる量が限られること。そうでなければ市場価値がついて広がった時に、生産量を引き上げようとする動きが常に発生し、結果として供給過剰⇒価格の崩壊⇒Store of Valueとしての機能を果たせなくなる、ということが常に起きる。

    市場価格に応じて供給量を調節できないビットコインというのは、市場価格安定という点では批判の対象となることが多いが、固定した供給スケジュールが変わらない、予測可能であるStore of Value,もしくはデジタルゴールドとして捉えた場合、強みでもある。


  2. 変更が非常に難しい(現実的に不可能)であること

    ①のポイントとも関連して、供給スケジュールも含めた特定の団体や管理主体による後方互換性のない勝手な仕様の変更が出来ないのがビットコインの価値源泉となっている。

    これはPoWのマイニングコストをかけたセキュリティ担保なども含むが、ユーザー、開発者、マイナーなどの複数の分散したステークホルダーの思惑が絡み合っている状況で、ハードフォークなどを通した変更を加えるのが非常にリスキーであり、現状維持(Status Quo)バイアスが存在し、変化しないということがゲーム理論的な均衡になっているのが、ビットコインの特徴である。

かなりかいつまんでいますが、上記のような点がビットコインがSound Moneyの機能を果たすのに重要であるという主張を展開しています。

 

The Bitcoin Standardの仮説から洞察されることは何か?

The Bitcoin Standardで展開されている主張が正しいとすれば、ビットコインとアルトコイン、ブロックチェーン技術全般に以下のような洞察が得られます。

 

  1. アルトコインの多く(もしくは全て)は、Sound Moneyとしての特性がないのでいずれ失敗する

    上記二点の、通貨の供給スケジュールが固定化され、それを変えることが現実的に非常に難しいというのは現状の暗号通貨ではビットコインのみである、と筆者は主張しています。もしそうであれば、ビットコインよりいかに速く安いコインが存在したところで、長期的にそれらのコインはビットコインと競争しているというよりは、既存の集権化された電子マネーのシステムなどと競合していることになり、長期的には政府や銀行などが発行したコインとの競争に勝つのは難しいことになります。

    よくビットコインとアルトコインの市場規模を比較することがありますが、上記の視点から考えてそれは本来は比較対象として不適とも言う考え方です。

  2. 今考えられているブロックチェーン応用の多くは無意味

    また、Ammousの主張の興味深い点の一つとして、彼はビットコイン以外のブロックチェーン応用のほぼ全てを切り捨てていることです。

    元々ビットコインはこのSound moneyを実現するために作られたシステムであり、それ以外の領域への応用は理解は出来るがそれは副次的なもので、Sound moneyを実現させる、もしくはそのMoneyを利用する以外のユースケースに関してはブロックチェーンより適切なアプローチ、テクノロジーがすでに存在するはずで、それらの多くは長期的には無意味であると主張しています。

    これは、オラクルなどの外部情報ソースに依存するスマートコントラクトや現実世界の証券やその他のアセットのブロックチェーン上でのトークン化も全て含めてです。

  3. 既存のお金の仕組みが非効率である限りビットコインに価値はあり続ける

    ブロックチェーン構造というのが、検閲耐性があり、変更が不可能なSound Moneyを作るためだけに生み出されたとして、既存のお金の仕組み(円やドルなどのいわゆるFiatと呼ばれるもの)が非効率である限りはビットコインには価値は存在し続けるはずです。これは現状のスケーラビリティの欠如による手数料が高騰する状況であっても変わりはないとしています。

    この視点からビットコインに最も近いのはゴールド(金)ということになりますが、例えば、1億円のゴールドをアメリカから中国に輸送するのにかかる輸送費が、ビットコインのトランザクション手数料を超え続ける限りはビットコインの方が優位性を持っている、などの点の指摘が非常に興味深いです。

 

Bitcoin Standard説への批判は何か?

自分はThe Bitcoin Standardの主張と個人的に自分の考えが近い部分もあり、主張はおおいに理解できますし、読み物としてもまとまっていて面白いと思いました。ただし、同時に以下のような批判も出来るとも思います。

 

  1. PoW不要論

    本の主張とは矛盾はしないが、Sound Moneyの要件を満たせるのであれば、別にPoWのいわゆるナカモトコンセンサスを使用する必要はないのではないか。もしそうであるとすれば、PoW以外のより効率的なマイニング方式で変更が難しく、供給量が限られているコインが出現したら、ビットコインではなく、そちらが勝つことになります。

  2. Bitcoin価格の不安定さへの批判

    この本では一般社会での実利用の上でのビットコインの価格の不安定性に関してはあまり記述がなかった気がします。確かにSound moneyとしてのビットコインが社会にいずれ価値を認められるとしても、価格が安定しない限りには日常生活での実利用は難しい部分も確かにありますし、もしそうであれば浸透にもかなりの時間がかかるのではないか、ということです。

    確かにデジタルゴールド、Store of Valueとしての存在意義を認める人は世の中に少なからずいるとは思いますが、一般の人はそんなことより何か便利なことに使えるか、などを当然重視する傾向があります。現代社会で大部分の人がゴールドを保有はしておらず、日常的にゴールドを使用する人がほとんどいないのがその証拠の一つとも言えるかもしれません。

  3. Digital Cash以外の応用のポテンシャル

    AmmousはSound money,Digital Cash以外のブロックチェーン応用はほとんど全てバッサリ切り捨てていますが、同時にもともと特定のユースケースのために作られたものが進化し、別の応用領域でも予想外に効果を発揮する可能性も捨てきれないとは思います。(同時に今のブロックチェーン応用の多くが筋が悪いというのも個人的にも同意しますが)

    なので、仮にもし彼の主張が正しかったとしてもその他の分野での応用や実験というのは引き続き意味があるのではないか、という反論をすることは出来ると思います。

 

考察

というわけで、Sound moneyとしてのビットコインに長期的に価値があるとする上記の主張は中々興味深いと思います。

 

当然上記主張に(全く)賛同できない人も少なからずいると思いますが、ビットコイン及びその他のアルトコインの根源的価値(の欠如)とは何か、ブロックチェーンの応用の意義と無意味さはどこにあるのか、というのをオーストリア派経済学の視点から分析しており、主張の一つとして理解しておいて損はないかと思いました。上記の紹介はあくまで一部なので、興味のある人は是非自分でAmazonとかで自分で買って読んでみてみてください。

 

特にここしばらく入ってきた人たちの特徴として、単純な手数料やスピード、柔軟性、企業とのパートナーシップの有無などの点のみを重視したり、ビットコイン自体は調べもしないし、関心がない人も多いと思います。ただし、仮想通貨全ての起点になっているビットコインの設計が特定の目標を実現させるためになされたものであるなら、もしその他のコインへの関心の方が強かったとしても、オリジナルの設計思想を理解しておくことは非常に重要だと思います。

 

じゃあ最後に結局ビットコインは買いなのか、という話ですが、まあ上記のような仮説が自分自身で納得、信じられるなら長期的に保有しても問題はないとは思います。ただし、短中期ではもっと振り落としがあるかもしれないですし、ビットコインも仕様変更の波に飲まれて上記の仮説が破綻したり、ビットコインより良いものが出てくる可能性も当然否定はしきれません。

 

いずれにせよ、しばらくパチンコ玉やペニーストックみたいな形でなんでもかんでも仮想通貨を買って上がった下がった、というような現象が特に去年は凄かったですが、市場も大分落ち着きを取り戻し現実が見え始め、こういう経済学的もしくは技術的な観点から優れたもののみが長期的には生き残っていくという動きが増しているという見方も出来るかもしれません。それは暗号通貨(仮想通貨)市場全体としては健全だとも思います。

 

ビットコイン以外のコインのファンダメンタルズ材料について

 

今回の話はビットコインの存在価値に関する話でしたが、他にも今後注目されるトレンドやコイン、またそれらのトレンドへの批判や懸念などのファンダメンタルズ材料については、今回の市場下落のタイミングでビットコイン研究所の方で一部まとめました。興味がある方はそちらも是非ご参加ください。具体的なトピックとしては、

・イーサリアムの苦境
・PoSコインの将来性
・ICOコインはもうゲームオーバーか
・ガバナンスコインは本当に機能するのか

などです。


また、どのコインが上がる下がるという話ではなく、暗号通貨の仕組みや課題、最近のトレンド、安全にコインを管理するセキュリティ体制の構築ど、より根本的な部分の知識を蓄えておけば、短期的なノイズは結構無視できるようになると思います。 

 

EOSのアカウントを無料で作成する方法+EOSの課題

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こちらの記事は、ビットコイナー反省会の動画で解説した、EOSのアカウントを簡単に無料で作ってみる方法を紹介しつつ、EOSの課題にも少し触れようと思います。

 

正直にいうと、想定していたよりはEOSアカウント作成に関して関心がまだあまり高くないなーという印象ですが、せっかく無料で一個アカウントを作って、EOSがどんな感じで動くのか体験する機会ですので、興味のある人は今のうちにやっておいて特に損はないと思います。BitcoinやEthereumと使用体験が全然違う部分も多いですね。

 

www.youtube.com

 

今回のアカウント作成はirexさんの無料キャンペーンを利用しているのですが、irexの方で記事でもやり方が詳細に説明してあるので、こちらも一応紹介しておきます。

 

help.irex.io

 

チュートリアル動画をやりながら一部説明していますが、EOSはこのアカウント作成部分が今までかなりハードルが高く、EOSを使い始める為にアカウントを作るのにも一苦労って位だったのですが、最近こういう外部のサービスやウォレットとの統合も大分改善してきており、前よりは大分使いやすくなってきています。改善のスピードはかなり早いですね、正直。

 

なのでユーザービリティは少しづつ上がってきているのですが、後はこれを使って何を出来るのか、EOSじゃなきゃ出来ないことが果たしてあるのか、というとこらへんの話がそろそろ増えるかな、という印象です。

 

同時に、開発者用の環境はどんどん改善している一方、まだまだ開発ツールがバラバラだったり、実際EOSを使った開発をしている人たちの数もそこまでは多くないことから、多様なアプリケーションが出てくるみたいな状況はまだしばらく先でしょう。その点ではEOSが競合として意識して、いい意味で真似しているEthereumの方がまだ大きなリードはありますが、EOSアプリケーションのEVMとの互換性なども予定されており、半年、1年後でどういう状況になっているかはわからない、といったところでしょうか。

 

一方、少なくとも部分的に競合と見なされるEthereumは(正確にはConsensysが分析をスポンサー)、EOSの概要と問題点を詳細に分析するレポートを出しており、こちらのレポートはいずれにせよ非常に良いまとめレポートになっているのでお勧めです。

 

具体的な内容を説明すると、それだけで単独の記事になってしまいそうですが、大きな指摘として、

 

  1. EOSはそもそもブロックチェーンというよりは分散データベースに近い
  2. EOSが公式に発表しているTxパフォーマンス(秒間数千~数万程度)は実際には、250tpsくらいしか出ない
  3. EOSトークンを基軸としたComputationリソース市場は実際に機能するか懐疑的

などの指摘をしています。

 

というわけで、当然全てが完璧なものはいずれにせよないですが、色々調べたりした中で個人的に今一番簡単で無料なアカウント作成方法を紹介したので、とりあえず入り口として試してみるのには最適です。

 

また、EOSに関しては先日HashHubでもイベントを開催して、そこで議論に上がったことについてコインストリートの方でも色々議論しました。興味がある人はそちらも覗いてみてください。

 

vimeo.com

 

ビットコインキャッシュの11月15日のハードフォーク展開予想

ビットコインキャッシュのハードフォークの件、支援者やホルダーだけでなく、市場やトレーダーも巻き込んで盛り上がっていますね。Bitcoin Cashだけでなく、Bitcoinにも一部影響のある重要な話だと思います。

 

去年8月に、Bitcoinがスケーリングとブロックサイズ変更の是非を巡って分裂のリスクが高まっていた時にこちらのブログでその後のSegWit2xの予想記事を書いていました。こちら当たらなかった部分もありますが、やはり事前に予想して後で答え合わせをするのは結構面白いので、今回のBitcoin Cashのハードフォークについても簡潔に展開予想をしておこうと思います。(まあこういう記事とかは後で見返しても当時の混乱とかを覚えてないと、誰でもこんなの簡単に当てられるだろう、とか思うかもしれませんがw)

 

coinandpeace.hatenablog.com

 

coinandpeace.hatenablog.com

 

ビットコインキャッシュのハードフォーク騒動に関しての予備知識

今回の件の基本的な解説は他にも日本語で色々有用な記事や動画があるので、いくつか紹介しておきます。そちらを見てもらえれば改めて説明する必要はないかと思います。

 

developers.yenom.tech

 

Bitcoin Cashのウォレットを開発しているYenomさんの、そもそもソフトフォーク、ハードフォークとは何か、リプレイプロテクションとは?などの基本的な事項を解説してくれているシリーズです。合計3記事で基本からまとめてくれています。

 

doublehash.me

 

Bitcoin Cashが、ABCとSVの二つに分裂する可能性が高い理由、またユーザーの対応策などについて大石さんがまとめています。

 

また、ビットコイン研究所の方ではさらに詳しい「そもそもABCとSVの技術的な差異やそれぞれのメリット、デメリットは何か?」「分裂時にユーザーやトレーダーがとらなくてはいけない具体的な行動や対策、注意点」などをわかりやすくまとめるレポートを複数公開して、他に参加者から質問があれば随時回答しています。

 

lounge.dmm.com

 

また、動画で色々聞きたいという人は昨日ビットコイナー反省会の方で、Yenom代表の宇佐美さんとビットコインキャッシュの普及活動に取り組んでいる雨弓さんに来ていただき、基本的な部分の解説や今後の展開などについて議論しています。

 

www.youtube.com

 

他にも色々公開されている情報はありますが、とりあえず上記のものなどを参考にしていただければよいかと思います。

 

11月15日のハードフォーク展開予想

 

さて、事前解説は他のソースに任せるとして、11月15日以降どういう展開になりそうか自分の予想をしておきます。

 

なお、当然ですが、必ずしもこの通りの展開に確実になるわけではないですし、自分も今回の件に関してはYenom宇佐美さんの解説などを参考に考察しているだけで、あまりそれぞれの陣営の力関係や細かいコミュニティーの様子などは把握していません。なので外れたらすいません、という感じにはなりますが、後で答え合わせしましょうw

 

BCHネットワークは二つに分裂する

 

これは上記Yenomや大石さんの記事などを参考にして欲しいですが、少なくとも技術的には2つのチェーンに分岐して、BCH ABCコインと、BCH SVコインの二つが存在することになるのはほぼ間違いないと思います。

 

一応、結局直前に双方の歩み寄りがあったり、結局11月15日に焦ってハードフォークをする必要がないという結論になり、ABCのアップデートが中止され、現状のバージョンを走らせつつ妥協案を探そう、という展開も考えられます。個人的にはこの展開がBCHコミュニティー全体にとって今考えられる最も友好的かつ現実的な解決だと思います。

 

ただし、今の時点でABC側とSV側のリーダー格同士のいざこざや罵り合いなどが見られ、技術というか人間関係的な要因でこのような歩み寄りは可能性は低いと自分は見ています。なので、一時的でもABCとSV二つのコインが取引所でリストされ、トレードされる展開は避けられないでしょう。

 

ABCとSVの現在の力関係 

まず、今の時点でのABCとSVの力関係を把握しましょう。

 

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PoloniexではすでにBCH ABCとBCH SVのコインの先物市場が用意されており、これが現在のコインの勢力関係を測るための一つの指標になっています。なお、Bitcoinの分裂騒動の時も似たような市場が立ち、結構正確な指標の一つになっていたと記憶しています。

 

これを見ると、今の時点(11月11日5時PMくらい)ABCが450ドル、SVが100ドルくらいで、ABCがまだ大幅に有利な状況となっています。

 

また、価格に加え、ABCとSVを支持するハッシュパワーも予想材料の一つとして重要です。Coin.danceというウェブサイトでBitcoin Cashのマイニングパワーの分布が見れます。

 

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cash.coin.dance

 

自分が聞いている限りでは、Coingeek, SVPool, BMG PoolはCraigと関係があり、BCH SVを支持しているプールとのことです。この3つだけで直近2週間で40%のハッシュレートを持っていることになります。しかもこの数日でHashrateがさらに上がっていて、現在時点ではおよそBCHのおよそ半分のHashrateがSVを支持していることになります。

 

ただし、ハッシュレートが強い方が最終的に勝つのか(大多数に正当なチェーンとして受け入れられるか)、というとそうでもありません。ハッシュレートは価格や流動性に最終的には追随するので、価格が高いコインの方が圧倒的に有利、それはつまり取引所での取り扱いやウォレットでの取り扱いなどに大きく影響されます。取引所やウォレットは、ABCを今まで通りのBCHとして取り扱うところの方が多く、この点ではABCが有利です。先物市場でもABCコインの値段の方が上なのはここら辺が大きな理由でしょう。

 

15日の分裂後どうなるか?

 

今の時点ではハッシュパワーで上回るSV側ですが、取引所や事業者、支持者の数ではABCの方が多いようです。そこらへんも含めると、分裂後もABCの方が高い価格をつけて取引所で取引されると思います。また、ハッシュパワーが現在SV側が上回っているとしても、ABC側につくJihanがBTC側のプールから一部ハッシュパワーを借りてきたりすればこれは比較的容易にひっくり返せるわけで、今の時点でのハッシュパワーはそこまでうのみにしない方がいいと思います。

 

ただし、SV側としては価格が相対的に低いのは問題ではなく、無視できないほどの一定の市場規模や注目度、取引所での取り扱いなどがあれば十分大きな混乱をBCHネットワークに及ぼすことが可能で、長期的な泥沼に持ち込めます。

 

自分が理解している限りではCraig Wright率いるSV側は、自分たちのポジションを貫きとおす為に徹底抗戦する姿勢を見せているようで、数週間以上Bitcoin Cash上での送金がまともに出来ないような状況になるのをみんな恐れています。(ここら辺の話はリプレイプロテクションの有無の話なのですが、冒頭紹介した記事や動画を確認してください)

 

では15日以降、具体的にどうなるかですが、自分の今の予想ではSVには少なくとも無視出来ないくらいの市場規模がつくはずで、またトレーダーの札束の殴り合いの状況次第では、分裂数日以内に価格的にSVがABCを上回るタイミングがあってもおかしくないと思います。

ただしSVがABCより高い価格を維持し、最終的に取引所や事業者がSVの方が正当なBCHフォーク、という認識になる可能性は低いと思います。ここらへんは技術の仕様がどちらが優れているか、というよりは、政治的に誰がどちらのサイドについているのか、それぞれのコミュニティーの大きさや支持者の数がどれくらいなのか、による推測にはなりますが。

最終的にはSVも中々死なないし、その間はABCも送金機能が麻痺してしまうので、1週間~2週間以内くらいでABC側が折れてリプレイプロテクションをつけ、完全に二つのネットワークとして、Bitcoin Cash(ABC)とBitcoin Cash SVという二つのコインに完全に分かれて決着、というのが一番可能性が高い展開だと予想します。

 

その他考えられる事態

一応上記の予想が自分の今のところの展開予想ですが、他の攻撃シナリオもあり、予想外の展開もありえるとは思います。

 

doublehash.me

 

大石さんのブログの方で説明されている、実質有効ブロックサイズを利用したSVからABCへの攻撃、みたいなものが実際に行われたとしたら、ABC側のノードを断続的にクラッシュさせることが可能かもしれず、そうすると市場もABCよりSVの方を高く評価を付け始めるような展開もありえます(まあそれを防ぐためにもリプレイプロテクションを余儀なくされるのかもしれないですが)

 

他には、ABCがリプレイプロテクションをつけるのを拒否する展開ですね。ABC側の様子を見ていると、SVよりは強硬な感じではないので、SVにほとんど価格がつかない場合やSVにその他の致命的なバグが見つかって自爆したり、とかではない限り、これもちょっと考えづらい気もします。

 

もう一つあるかもしれないのが、BTCマイナーの参戦展開です。これはJihanが一部のBTCマイニングのハッシュパワーをBCHのハッシュ競争に振り分けるのではないか、という説も含めですが、BTC側のマイナーが意図的にどちらかのネットワークを攻撃し、価格をクラッシュさせてショートポジションをとって儲ける、みたいなこともありえなくはないと思います。

 

ここら辺の細かい部分は実際に何が起こるかはさすがにまだわからないですね。

 

Bitcoin Cashへの評価はどうなるのか

 

さて、自分は最終的には2週間以内くらいに今回の事態は一定の収束を見ると予想しますが、同時に今回の件はABC,SV双方、Bitcoin Cashそのもの自体にダメージを残すと思います。

 

17年の8月にBitcoinとBitcoin Cashが分かれた時、二つのコインの価格の和は、元々一つだった時の価格を上回りました。なので、分裂したことでどこからかお金が降ってきたような、保有者にとっては美味しい展開になったわけです。これは長く続いたスケーリングの議論が一定の決着を見せ、二つの別の方向性のコインとして前進できることが好感されたから、と自分は考えています。

 

一方、今回のBCHの分裂騒動で明らかになったのは、比較的些細な仕様変更を巡り、ネットワークが分裂し、全体のネットワークが使用不可になったり、事業者やユーザーに多大な混乱を与えるような状況です。こうなると、BCHの根本的なオンチェーンの仕様変更や定期的なアップグレードをしていくアプローチ自体への疑念というのも出てくると思いますし、実際今回の一連の騒動で冷めてきてしまっている人たちもいるように見えます。

その点では、おそらく分裂後何とか2つのネットワークが安定したとしても、BTCとBCHの分裂の時とは違い、ABCとSVの合計価格は分裂前のBCH価格を下回るのではないかと思います。

ただし、実は今回の話はBCHだけの話ではなく、 Bitcoin含むその他の暗号通貨にも直接関わる話であり、管理主体のいないはずの暗号通貨に実は実質的独裁者がいた方がいいのではないか、GPUのPoWマイニングベースのコインで似たような事態が起こる可能性、など色々考えさせられます。その点では別に「BCHのやり方が間違ってた」と全否定するよりは、今回の一連の事件を通して暗号通貨のガバナンスや今後その他のコインへどういうことが起こりえるか、という教訓にしてけばよいのではないでしょうか。

 

とりあえず15日前後はまだ絶対何かしら動きは出てくると思うので、特に保有者や影響を受ける人たちは最低限の学習やフォローをして、最低でもコインを失ったり、予想外の機会損失したりしないようにお勧めします。