ビットコインダンジョン2.0

Bitcoin (ビットコイン)やブロックチェーンを技術に詳しくない人たちのために、面白おかしく、そして真面目に語ります since 2014

Decred, Tezosから考える暗号通貨のガバナンス問題

 

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最近はBIP148(UASF)など、ビットコインのガバナンス問題が議論されていますが、アルトコインの中には特にこの「ガバナンス」の問題をプロトコルレベルで解決しようと試みているプロジェクトがあり、その中でも特にDecredとTezosについて調査し、それぞれのモデルをビットコインとイーサリアムのガバナンスやプロトコル変更のモデルと比較する記事をビットコイン研究所の方で書きました。

 

ガバナンスの問題は今まさにビットコインが直面している大きな壁ですし、ビットコインなどとは違った発想でこの問題に取り組んでいるプロジェクトということで、中々興味深かったです。以下に内容の一部だけですが、紹介すると…、

 

  1. DecredのPoWとPoSのハイブリットモデル

    Decredは元々Proof of Activityという論文を基に設計されている部分が多いのですが、トランザクションの承認とブロック生成はPoWマイナーにやらせ、最終的なブロックの可否の判断、門番的な位置づけでPoSでコイン保有者が見張っているというハイブリッド式になっています。この仕組みが今後流行るかどうかは知らないですが、PoS単独ではNothing at stake問題などある中、一つの代替案になるのかもしれません。


  2. プロジェクトの資金調達方法とガバナンス

    ビットコインは基本的にはボランティアのオープン開発中心なんですが、それでもコア開発に資金を提供しているBlockstreamに支配されている、などの利益相反などを批判されることがよくあります。

    一方、最近はDev taxとか言って、マイニング報酬の10%などを開発者や初期の投資家分として徴収するというモデルが結構多い気がするのですが(Zcashなど含む)、これはこれで問題も多いなと思っていて、特にTezosの場合は開発者への報酬がちょっと多すぎなんじゃないかと感じました。

  3. コイン保有者がなんでも決められるブロックチェーンは本当に理想なのか?

    DecredとTezos共通の理念として、最終的にプロトコルの変更を決めるのはコインの保有者であるべきだ、という思想に基づいており、現在ビットコインが抱えているような問題はそれぞれ解決出来ているとしていますが、ユーザー投票に基づくガバナンスも結局は開発者への集権体制に収束したり、開発者による長期的、科学的なロードマップを策定できなかったり問題も少なからずありそうです。一方ビットコインは「停滞」しているとも言われますが、外部からの圧力や攻撃に対して耐性のある「不変性」を設計通り発揮しているという見方も出来、そこまで簡単に優劣をつけれるものでもないとは思います。

以上のような感じでより詳細にそれぞれを比較しているので、興味のある方は是非ビットコイン研究所の方もご検討ください。(おまけでTezosのICOへの個人的な印象・感想もちょこっとだけ載せてます)

BIP148(UASF)の概要とリスク

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昨日ビットコイナー反省会の特別収録として、8月1日にアクティベートされる可能性のあるBIP148について大石さんをゲストに迎え、BIP148の概要と仕組み、考えられるシナリオ、リスクなどについて公開議論しました。

 

BIP148、もしくはUASF(User Activated Soft Fork)にはコミュニティの中でも賛否両論あり、海外のコミュニティではこの話で今持ちきりなのですが、日本語での情報はまだ限られているということで、簡単な背景の説明も含め、かなり突っ込んで議論出来たと思います。

www.youtube.com

 

BIP148は成功すれば、速やかに一つのチェーンに収束し、SegWitの導入、Asicboostの排除など、Antpoolのチート問題、手数料問題の改善、マリアビリティの修正によるセカンドレイヤーソリューションの前進など、ビットコインにとって大きなターニングポイントになるのは間違いないですが、同時にネットワークの分断の常態化による混乱とユーザビリティーのさらなる低下、ハードフォークやPoWアルゴリズム変更によるネットワークの完全な分裂などのリスクもあり、一般ユーザーやビットコインホルダーにも直接影響する、非常に重要かつ深刻な問題です。

 

議論の内容としてはこの記事で紹介するより、是非動画を直接見て、賛成するか反対するか、ユーザーとしてどのような対策をとるべきか各自考えて欲しいです。(関連する記事のリンクなども動画詳細に貼っています)

 

8月1日まで間違いなく二転三転状況が変化していくと思うので、より詳細な解説が聞きたい人、直接質問したい人などはビットコイン研究所への参加も是非検討してください。こちらでは実際かなり詳しくカバーしてます。

投資としてのICOの実力は? ICOの光と闇①

前々から言っていたICOに関する考察シリーズをいよいよ始めました!

最初は記事一つ、動画一つくらいでまとめるつもりだったんですが、特にここ1、2か月くらいの間でICOに関連する情報、データ、オピニオンなどが爆発的に増えており、せっかくなので何回かに分けて期待できるところ懸念すべきこと、その他の視点からICOについて斬ってみることにしました。

今回は特にICOを投資手段として見た時に、果たしてICOは魅力的な手段なのか、という点に関してです。


今回の話はほぼ完全に自分が調べたり考えたりしたことではなく、5月10日にRicky Tanさんという人が公開した記事とリサーチに関して、日本語で要点を説明する形になっています。

(ちなみに自分個人としてのスタンスとしては現在のICOの状況は健全なものとは思っておらず、いずれ崩壊劇、悲劇などが続くと思っているのですが、それの根拠については次回以降で説明します。)

 

medium.com


以下に動画でも解説しています。

www.youtube.com

 

動画で話したことの要点は以下の通りです。

 

  1. ICO(Initial Coin Offerings)は暗号通貨、ブロックチェーン関連のプロジェクトが発行したコインに事前に投資する行為と今回は緩く定義
  2. 2014年7月以降、ICOをしたプロジェクト(確認できたもの)は117。その内56が資金調達を成功させ、合計で400億円近くの資金がICOで調達された
  3. 今年4月だけでも100億円以上の資金がICOで調達され、むしろ金額は加速的に大きくなってきている様相
  4. 資金調達を成功させた56のプロジェクトのうち、34のプロジェクトのコイン(トークン)は取引所でトレードされており、それらのコインの合計市場規模は1200億円程度。
  5. ICO時のトークン評価額が合計150億円程度なので、何も考えずに全てのプロジェクトに分散投資しても単純計算でおよそ8倍のリターンが得られていたことになる。
  6. ただし、同じタイミングで同じ額Ether(Ethereum上のコイン)に投資していた場合、Etherの投資リターンは10倍を超えており、ICOに投資するより割がよかったことになる
  7. データの切り方で解釈や数値は変わってくるので、あくまで参考値の一つにはなるが、よくわからないICOにお金を突っ込むよりは、Ethereumなどのプラットフォームコインに「投資」した方が結果が出せる可能性がある、ということは投資判断の材料とした方がいいかもしれない。
  8. 今後ビットコインやイーサリアム、ICOコインの価格がどうなるかは当然正確には予想は出来ないが、個人的には何もプロダクトをローンチしていないプロジェクトのコインでも簡単に10倍程度価格が上昇していく状態は異常、というかかなり危ういと思っている。
  9. (ちなみにこちらの記事は一か月ほど前に公開された記事で、その間にも色々ICOをしたプロジェクトや事件もあったので、必ずしも最新の正確な情報ではないです。)

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