Coingecko第二四半期まとめレポート 暗号通貨トップランキングの推移、Twitterセンチメント分析、Dapps利用推移など
先日の反省会の動画でも少し紹介したのですが、Coingeckoの第二四半期のまとめレポート、かなり面白い情報があったので、ブログの方でもいくつか自分が気になったデータを紹介してコメントしておきます。
Q2のデータなので、すでに最新情報、て感じではないですが、このレポートでしかとってない切り口や、中長期的に参考になる情報もあるので、まだ見てない人はさっと目を通しておいて損はないと思います。Coindeskなども似たようなレポートを毎四半期出してますが、個人的にはCoingeckoのものの方がクオリティが高くて切り口も新鮮だと思ってます。
- 仮想通貨の時価総額ランキングの推移を四半期ごとに比べたもの
- 上位の顔ぶれはなんとなくは変わってないけど、EOSがかなり上げてきたり、などはある
- 10位以下は変動がかなり激しくて、みんな大好きBitconnectが最高13位とかに以前入っていたのが笑える。
- あまり細かくは追ってないけど、Stellarとか静かに上がってきているものがあるのと、なんだかんだIOTAとかも上位に残っているのは少し意外。
- これは見れば明らかですね。取引高は全体だと下がってきているのに対し、取引所の数は増えてきてる。
- 最近はもはや自分も全く知らない草取引所がたくさんあって、それを日本からも使っている人たちも結構多くてすごいなーと。
- 日本でもちょうど交換業登録の審査が再開、というニュースがあったけど、今ぼろもうけしている取引所も少しづつ真っ赤な競争の激化、手数料競争や利益率の低下、などは避けられないでしょうね。それくらい儲かるということで。
- ICO色々ありましたが、EOSのICOで集めた金額が半端ない、というものを一発で図示しているもの
- EOSに関してのローンチ前後の経緯など。超ゴタゴタしている印象ありましたがまとめてくれています。
- EOSに関してはビットコイン研究所とかでも結構詳しいレポート書いたのと、自分でも最近結構調べています。
- ちなみに、EOSはかなり注目されていて、今後も盛り上がる可能性はあると思ってますが、同時に根本的な問題も(まだ)多い、というくらいの認識。
- Twitterでのセンチメント分析。Coingeckoらしいユニークな切り口。
- Twitterでの言及数などはBotとかである程度操作出来てしまうので、必ずしも正確な分析材料にはならないですが、暗号通貨界隈の温度感を測るための重要なツールですね。
- 日本でもTwitterを見ていればどのコインが人気で市場の過熱感や絶望感などは感覚的にわかります。
- TRONのメンション数が時価総額とかに比べて高いんですが、これ日本のなんとか教団の影響じゃないのか笑
- 一次的な盛り上がり、絶対教団のせいだろ笑
- Dappsの利用数と取引高の推移
- Dappsの利用数はまだまだ全然少ない、という指摘を自分もしてきていますが、データを見るとただTx数や平均取引高はこの半年でも着実に増えているのがわかります。
- こちらのデータはEthereumオンリーだと思いますが、これが今後さらに加速して増えていくのか、どこかのタイミングで手数料高騰などもあり頭打ちするのか、もしくはその他のスマートコントラクトプラットフォームに移行したりするのか、次のQの分析も面白そうです。
というわけで他にもパッと見て直感的に興味深いデータやチャートなどを出しているので、是非目を通してみてください。全体の3分の1も上記ではカバーしていないので。
Coingeckoのレポート回を重ねるごとに良くなってきているので、次回Q3のレポートもどういう仕上がりになるのか楽しみです。
最後に閲覧リンクはこちらです。再掲。
Stablecoin(価格安定通貨)は過大評価されているのか?
昨日、ビットコイナー反省会で、「安定コイナー反省会」ということで、少し前から注目がかなり集まっていたStablecoinについて、おそらく日本で最もStablecoinに詳しいDRIの稲垣さん と、Enigma反省会にも出演してくれた「西野カナゴールド」さんにゲストに来てもらい、特にDaiとBasisを中心に概要と欠点、今後の予想などを議論しました。
さて、Stablecoinの分類やそれぞれの仕組みの概要はこちらの動画を見てくれたり、または他にも日本語でもStablecoinについては複数良い記事がすでにあるので、そちらを参考にしてみてください。以下にいくつか紹介します。
概要の把握などは反省会動画+上記の記事などを読めばよいと思います。以下に一部放送中にも話した自分の所感を手短にいくつか。
Stablecoinは過大評価されてないか?
自分が最初にStablecoinに興味を持ったのは今は亡き?Nubitsだったと記憶していますが、確かに当時からStablecoinは面白いことをやっていましたし、注目している人もいました。また、問題も多そうですが、Tehterはトレーダーを中心に広く使われており、市場規模も3000億円を超える規模になってますし実際便利です。
(Nubitsよ、永遠に…)
ただし、Stablecoinが特にここまで注目されるようになったのはここ半年くらいな印象で、ICOでの巨額資金調達を成功させたり、有名VCやファンドからの投資を受けたことでDaiやBasisなどは特に注目されています。
今回の放送の為に直前にざっと調べはしましたが、自分もそれぞれまだ細かく仕組みや背景の事情を理解してるわけではない、と注意書きをした上になりますが、ただし現在のStablecoinへの期待は若干過熱感があるな、と今回の放送を通しても思いました。
100億円以上の資金調達をしたBasisもまだ稼働すらしてないですし、稼働前から価格下落時のBondトークンの購入インセンティブ欠落による価格低下スパイラルや、Sharesトークンの組み込み設計の問題などが指摘出来ると思います。
Daiの方はすでに稼働していますが、事前にEtherを供託しなくてはいけない仕組みなので、利用はまだ限定的ですし、またすでに一回Pegが壊れたのを無理やり運営が戻す、みたいなことがあったり、利用率と仕組みの問題点双方で若干期待が先行している感はあります。
とはいえ、Daiなどもまだ始まったばっかりですし、課題なども当然認識して今色々議論改善しているところだと思うので、これから伸ばしていく可能性はあるとは思いますが、今の時点ではその他の全てと同じく少し期待されすぎだなー、というのが反省会で話しながら受けた今のところの所感です。
巨額の資金調達をしたから優れている、はず…?
ここまで期待と注目が膨らんでいる主要因は資金調達金額などなわけですが、多額の資金を集めたプロジェクトだから優れているはずだ、自分が理解不足、読み間違えているだけだ、というような指摘(自省)も出来るとは思います。
同時に別に多額の資金調達したから優れているとか、将来的なポテンシャルがある、というわけでは必ずしもないですし、それは過去のICOハイプの推移なども見ると明らかな気がします。重要なのは、お金を入れている人たちはどのように儲けようとしているのか?の部分が重要で、それ次第では実は別にプロダクトが優れているかどうかはあまり関係ありません。要は著名投資家中心に盛り上がっているからすごい、上手く行くとすぐに思わない方がいいでしょう。これは今のStablecoin以外にも言えることなので、次の記事で最近のICOのトレンドと考察みたいな感じで書ければ書こうと思います。
Stablecoinから考えるプロトコルインセンティブの話
最後に、今回の放送でも少し話が出て面白かったことの一つに、Stablecoinの経済規模(Marketcap)がどれくらいの大きさに将来的になりえるか?という話です。Daiの場合は事前に供託するタイプのモデルなので、市場規模はそこまで大きくなりえないのではないか、という話も昨日出ましたが、Basisなどシニョリッジシェアタイプだと、発行の裏付けになる供託は必要はないので、理論上は上手くいけばかなり大きな市場規模になりえますし、Basisのサイトとかを見ていると、中央銀行発行通貨を置き換えられるかも、くらいの壮大なビジョンが書いてありました。
ただし、Basisは結局Etherのパブリックチェーン上のトークンなので、Ethereumマイナーのインセンティブなども考えると、Etherの市場規模を超えるようなBasisトークン経済圏が形成されるようなことはあり得ないと思います。(あり得るが、そうすると土台のプロトコルが攻撃されたり、まずい事態になりそう)
実は以前に上記の記事で、トークン化が進むと実は問題だよね、という話を少しだけしていたのですが、現在Ethereumを中心にこういう流れが加速している中、具体的な対策などはそろそろ考えないと、理論上の話ではなく、実際にEthereumのプロトコル自体が攻撃されたりする事態もありえます。先日のMonacoinのBlock withholding attackなど、理論上考えられる攻撃は今後全てされると考えた方が良いので。
(この記事ではビットコインブロックチェーン上でのトークン化について話していますが、Ethereumでも全く懸念は一緒)
というわけで、プロトコルセキュリティの面で考えても、Stablecoinがそこまで大きくなるのは必ずしも好ましくないですし、そこまで大きな規模のものになりえない気がします。
まとめ
というわけで諸々考えると、やはり若干過剰評価されている感は否めないのと、すごい、と言われて調べてみると、以前とやっていることが本質的には変わらなかったり、などが多い印象を受けました。
例えばNubitsなど過去に失敗した事例はありますが、細かい仕組みは違えど、本質的な価格下落ショックの吸収が出来ないとか、運営による市場操作の必要性などの部分は結局変わらないのではないかと。
同時に、Ethereumが出てきて、スマートコントラクトによる自動化が出来るようになったことで、中央集権的な取引所や運営への信頼などに(あまり)頼らないで自律的に価格が大部分安定しているコインが出来るようになったのは非常に面白いですし、法定通貨担保型からの大きな進化ともいえると思いました。
とりあえず、今回の放送をきっかけにある程度調べたり、興味が少しまた出てきたので、出来る範囲で自分もキャッチアップしたり、また放送したりしたいです。
次は今回の記事でも一部話しましたが、最近のICOの変化とその問題点などについて書こうと思います。ちょっと久しぶりになんかブログ記事を書くやる気があるのでw
それでは
単純な支払い手段を超えたLightning Network応用の最新事例
一つ前の記事でもLightning Networkのユーザー体験などについて書きましたが、ビットコイナー反省会の動画で、最新事例やユースケースを実際にデモで見せつつ、Lightning Networkの今後の応用可能性や今の時点での課題などについて説明しました。ビットコインダンジョンの方でも要点を紹介しておきます。
Lightningは単純な支払い手段の代替ではない
Lightning Networkについて考えるときに、まだまだ単純なペイメント手段としてとらえている人が多い気がします。確かにLNが広く使われるようになれば、今までの通常のオンチェーントランザクションより速く(ほぼ即時着金)、安いペイメントも可能になり、店舗での支払いなどの多くがLNに移る可能性は大いにありますが、単純にLNを支払い手段としてとらえた場合、わざわざその為にビットコインを用意して、チャネルをセットアップする理由や既存のSuicaやAlipayみたいなものに対する優位性も余りありません。
また、LNをビットコインのスケーラビリティの解決策として見る見方もありますが、個人的にはLNはスケーラビリティの問題とは本来切り離して考えるべきだとも思っています。確かに大部分の細かい送金がLNベースになればスケーラビリティの大きな向上も見込めますが、LNは比較的大きな額の送金に向かないことや、オンチェーンTxに頼る部分もあり、結局LNとは同時並行で各種その他のオンチェーン、オフチェーン技術の改善が必要なのは間違いないでしょう。
重要なのは、LNを使うと「今までできなかったタイプのアプリケーション」が可能になるということで、それらの新しいコンセプトがここ数か月で少しづつ見え始めています。以下に自分が面白いと思ったものを一部紹介します。
Satoshi's place
- Satoshi's placeはオンライン上の共有お絵かきボードみたいなもの
- ただし、自分のイラストを書き込むには1pixelごとに1satoshi課金が必要
- オンライン上の細かいアクションに対して、1円以下のマイクロペイメントを組み込むことで、新しいタイプのPaywall的な仕組みが作れたり、細かい課金が可能になることの証明
Lightning Spin
- LNを利用したProvably Fairなオンラインギャンブルサイト(のコンセプト証明)
- LNを利用することで、少額からBetできるだけでなく、即時着金やLNの双方向ペイメントを利用したWithdraw(払い戻し)が出来る
- LNの即時着金という特性を使うことで、ゲームやサービスのユーザビリティーやUtilityの向上
LightningJP (API Callごとの課金)
- Lightningで1円くらいの金額を送ることで、特定のアカウントでツイートが出来るというコンセプトサイト
- BlockstreamのIFTTTという仕組みを利用
- APIコールごとの1円以下の細かい課金やコントロールを利用することで、事業者の新しい集金方法や、スパム対策などにも利用可能か
Zigzag
- Lightningを一部組み込んだShapeShift的なサービス
- 完全なトラストレスな形ではまだないが、LNを通してビットコインをZigZagに送ることで、各種アルトコインを送り返してくれる
- LNの即時着金の特性を利用したもので(ShapeShiftのように着金時間を数十分待つ必要がない)、LNを一部だけでも組み込むことで、ユーザー体験の向上や為替リスクの回避などが可能に
- 取引所が今後LNをどう組み込んでいくか、特に即時着金とユーザー資金を取引所が持たない形(Non-custodial exchange)、また、LNを利用したクロスチェーンスワップによるDex(分散取引所)が2018年後半~19年のトレンドになってくるはず
その他
- ゲームやエンタメ領域でユースケース考案が先行している
- LNでお金を先にデポジットして、ゲームをクリアしていくごとに返金がされる「実質無料ゲーム」。返金機構としてのLN。
- 他にもTwitchなどのゲーム視聴プラットフォームにLNを組み込むことで、ユーザー(視聴者\ファン)からのリアルタイム送金が、実際のゲーム攻略やゲームシステムに影響を及ぼす形のもの、エンタメ的なものとの相性が良さそう
まとめ
- Lightning Networkは単純な送金手段の改善ではない
- おそらく支払い部分の置き換えの前に、その他のサービス、今まで出来なかったことや、存在しえなかったサービスなどの部分の応用が先行して、支払い手段としての浸透はその次だと考える
- すでに上記のようなLapps(Lightning Apps)が出てきており、応用はさらに今後加速していく
- 同時にインフラ部分やウォレットなどのインターフェースなどはまだまだ未成熟で、そこそこリテラシーの高いクリプトユーザーが使い始めるのは半年~1年、ライトユーザーの利用などは1年半~2年先か?
- しばらくは使いたい人は実験と失敗、セルフゴックスの連続を覚悟すべき笑
7月21日のHashHubのカンファレンスでも複数セッションでLightning Networkについては解説、議論がされます。まだ席ももう少し残っているので、是非スケジュールが合う方はこちらのカンファレンスでお会いしましょう。内容は今回は自分が中心に企画しましたが、Lightning以外にも最新の事例や議論、考察が聞け、自分も含め色々勉強になることが多そうです。