ビットコインダンジョン2.0

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Lightning, Enigma… セカンドレイヤーがブロックチェーンにとって重要な理由

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ここ1週間ほどで、大石さんとLightning Networkに関するQ&A放送と、西野カナゴールドさんとEnigmaに関する議論をビットコイナー反省会の方で放送しました。

 

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それぞれコンセプト自体は難しいかもしれないですが、比較的平易に解説、議論できていると思うので、まだの人は是非見てみてください。両方ともまだまだ発展途上な技術ですが、今後重要性が高くなる可能性が大きいものです。

 

この二つの技術に共通してですが、メインブロックチェーン上のレイヤーに存在する、いわゆるセカンドレイヤーが今年(と多分来年も)最も重要なテーマ、トレンドになってくると思います。

なぜセカンドレイヤーソリューションがブロックチェーン、特にビットコインなどのいわゆるパブリックチェーンにとって重要なのかいくつか自分が考えている理由を挙げます。

 

メインチェーンに影響を与えずに独立して実験ができる

今となってはずっと昔の話の気もしますが、去年までビットコインはいわゆるスケーラビリティ問題で、SegWitがブロックされ中々採用されない、コア開発者と中国のマイナーのどろどろの足の引っ張り合いみたいなことが起きており、技術的にもコミュニティー的にも中々前進できない苦しい時期が続いてました。結果としてビットコインとビットコインキャッシュにコミュニティーが枝分かれして、今はそれぞれがそれぞれの方向性を追求しているような状況です。

 

セカンドレイヤーが重要な理由として、スケーラビリティ問題にみられるようなメインチェーン上の合意形成の難しさ、つまり良くも悪くも新しい変更を加えたり、方向性を決定したりするのに時間がかかる(場合によっては不可能)などのパブリックチェーンのある種の制約に影響されず、自由に機能を追加したり実験が出来ることが挙げられます。

 

メインチェーンへ変更を加える場合は現在はBIP(Bitcoin Improvement Proposal)での提案後、その他のオープンソース開発者に提案をレビューされ、もし開発者コニュニティーの一定の合意が形成されれば仕様が公式クライアントで採用されたり、ソフトフォーク(場合によってはハードフォーク)によってマイナー及びユーザーによりルールが執行される、という流れになります。

これはどんな提案でも時間がかかるプロセスですし、場合によってはSegWitのようにマイナーにブロックされ中々採用されなかったり、開発者コニュニティーの合意が得られずリジェクトされるかもしれません。(こういうことは実際に多い)

 

一方、セカンドレイヤー技術に関しては、仕様の変更や機能追加に関して原則としてメインチェーンへの影響はないので、実際に有用かどうかは別として加えたい変更があれば開発者が自由に実験したり、機能拡張することができます。

 

メインチェーンへの変更はリスクの高いフォークを誘発したり、予想外のバグを生み出してしまう可能性もあるため、実験の場がセカンドレイヤーに移行し、そこで色々好き勝手出来るというのは非常に重要です。

 

特定のチェーンへ依存しないこと

セカンドレイヤーソリューションのもう一つの利点として、特定のチェーンに依存しないということも挙げられます。

 

今までの暗号通貨のよくあるパターンとしては、新しいコンセンサスアルゴリズムや機能、構造を持った暗号通貨を作りたい、という場合別の暗号通貨(ブロックチェーン)、俗にいうアルトコインを立ち上げて、その他のコインと競争していくというのが一般的でした。ただし、セカンドレイヤーソリューションの場合、特定のコイン(ブロックチェーン)に依存せず、多くの暗号通貨に等しく適用できる技術であることが多いです。

 

例えば、元々ビットコインのスケーリング問題の解決策の一つとして提案されたLightning Networkですが、ビットコインだけではなく、Raidenなどの形でEthereumに、他にもLitecoin及びその他のブロックチェーンにも採用され始めています。

 

つまり、セカンドレイヤーは「私はこのコインを推しています」という無益なポジショントークやシェアの奪い合いから離れ、単純に暗号通貨エコシステム全体に益する改善技術として公共性が高いというメリットがあります。

 

また、最初に使用していたチェーンに問題が起きたり、そのチェーンが形骸化したりした場合、その他のチェーン上にその技術を移行することで簡単に生き残ることができ、セカンドレイヤー上で開発された技術やサービスは長期的に有効になる可能性が高いです。

 

もちろん、そのセカンドレイヤーのプロトコルがその他のセカンドレイヤープロトコルとの競争に敗れ、置き換えられる可能性は当然ありますが、メインチェーン上のネイティブコイン同士の競争、セカンドレイヤーソリューション間の競争の違いという話自体は興味深いですが、複雑になるのでここでは割愛します。

 

(ちなみに、Enigmaの放送でも少し話しましたが、ではセカンドレイヤープロトコルで独自のトークンを組み込むのは悪手なのか、については状況次第のところもあると思います。これについては次回以降機会があればまた考えてみたいです。)

 

メインチェーンへの負担削減

ビットコインやイーサリアムなどのメインチェーンは、原則的に記録を全てのノードで共有するという設計上、根本的にスケールさせるのが難しいという点はよく批判されてきました。

例えば、World Computerという概念で売っているEthereumも、最近増えてきているCryptokittiesなどのブロックチェーンゲームなどの人気の影響をもろに受けており、メインチェーン上で大量のトランザクションを必要とするアプリケーションがたくさん出てくると、メインチェーン上の手数料高騰、同期やストレージコストの増加など全体への負の影響が出てきます。ビットコインはイーサリアムよりシンプルなトランザクションしか作れないですが、それでも特に去年ネットワーク混雑と手数料増加がユーザビリティなどにもろにダメージを与えていましたね。

 

これに対してオンチェーンの容量を拡張したり(ブロックサイズ引き上げ)、トランザクションのサイズ削減したり、ネットワークを分割したり、など色々工夫、対策は考えられますが、オンチェーンでのトランザクションや記録されているデータの増加によるネットワーク全体の負担増、という構造は基本的に変わっていません。ユーザーや企業の利用コストの外部性が発生している、という表現を使うこともできるかもしれません。

 

一方、セカンドレイヤーのわかりやすいメリットして、データや送金記録の大部分はオフチェーンに保管し、メインチェーンはあくまでデータの一部や存在証明を埋め込んだり、いざという時の返金、罰則メカニズムとして使われているだけなので、メインチェーンへの負担を著しく削減できます。要はネットワーク全体に共有する必要性のないデータは出来るだけ外に切り離して、ただしそれでもいわゆるトラストレスな性質な失わないように工夫しよう、という考え方です。


結果としてオンチェーン(ファーストレイヤー)の混雑問題などが軽減されるだけでなく、セカンドレイヤー上でより高速で安価な送金やコントラクトの実行が可能になります。

 

このようなオンチェーンとオフチェーンのレイヤーの住み分けの方向性ははビットコインやイーサリアムだけでなく、暗号通貨関連全般のトレンドと言えます。

 

 

最後に

というわけで、自分は今年以降は特にセカンドレイヤー技術が熱いな、と改めて思っています。

 

ただし、それと同時並行でもはや自分が全く理解できないレベルのプライバシーやセキュリティー、スケーラビリティに関する画期的な提案や技術革新がメインチェーン上でも起きています。

 

なので片方だけやるべきとかいう話ではなく、当然両輪で進めていくべきなのは間違いないでしょう。しかし、今まではオンチェーンでどこまでなんとか出来るか、コミュニティで一致団結して頑張らないといけない!という割と一元的な話から、セカンドレイヤー、そして将来的にはサードレイヤーなど新しいレイヤーが出来て、そこでより自由に開発や競争が進んで行くというのは、将来的な拡張性や技術革新にとって飛躍的な進歩だと考えています。

 

自分がビットコインに興味を持った時に感じたポテンシャルや、広く一般的な使用に耐えうる新しいタイプのサービスなどはほぼ間違いなくセカンドレイヤー、もしくはサードレイヤーで初めて現実的になるんだと思います。

 

というわけで、今年1年でいきなり全てががらっと変わるわけではないですが、おそらくその将来図が一部垣間見える年になるのではないか、と2018年には期待しています。今回はLightningとEnigmaについて話しましたが、他にも実は自分が注目している画期的なセカンドレイヤーソリューションは他にもあるので、また時間がある時に記事か動画にします。

 

それでは。