ビットコインダンジョン2.0

Bitcoin (ビットコイン)やブロックチェーンを技術に詳しくない人たちのために、面白おかしく、そして真面目に語ります since 2014

ビットコイン in 台湾 台湾のビットコイン業界はこれから来るかも!?

f:id:coinandpeace:20160505213429j:plain

 

いよいよ「ビットコイン in 台湾」シリーズの最後の記事です。

 

すでに台湾大学のブロックチェーンのクラスについてと、台湾のファミマでビットコインの購入が出来ることについてそれぞれ記事にしました。

最後の記事は、台湾のビットコインスペースの全体的な特徴とはどんなものか、日本と比べるとどうなのか、今後どう成長して行きそうか、などを考察してみます。


台湾についてはちょっと記事にまとめきれないほどのインプット、小ネタなどが集まったのですが、色々とお話しを聞かせていただいた台湾の関係者の方に改めてお礼を言いたいです。結構仕事や個人的に日本に来る人も多いようなので、彼らが日本に来たときは丁重におもてなししないといけませんね。

 

台湾のビットコイン市場についてここまで詳しくなれるのは世界でも多分ここだけ!笑

 

台湾に存在するビットコイン、ブロックチェーン系事業者

 

今回台湾に存在する関連企業ほぼ全てからお話を聞くことが出来ました。掲載順番は話を聞けた順。

Wagecan

ビットコインデビットカードの会社です。以前WagecanのCEOが日本に来ていてその時に仲良くなったのをきっかけに、今回一番最初にインタビューしました。

ビットコインデビットカードの事業をやっており、市場の小さい台湾ではなく、すでにアメリカなどを中心とした海外のマーケットで拡大しています。すでにこのビジネスで黒字化しているそう。

自分も今回の台湾滞在中はWagecanも活用して、ビットコインだけで生活できるようにしました。ビットコインデビットカードのアカウント管理用のアプリもあるのは便利です。


CoolWallet

 

台湾でハードウェアウォレットを製造している企業です。

一番最初の製造分はすでに売り切れのようで、今回は残念ながら自分でCoolWalletをいじることは出来ませんでしたが、クレジットカードのような形状にスクリーンがついており、そこで残高確認したり出来るカード型のハードウェアウォレットで中々スタイリッシュで文字通りCoolでした。(ウェブサイト見てみればどんなイメージかわかりますが、見た目以外にももちろんセキュリティや利便性もかなりこだわっているようです)

現在改良した第二版を製造中のようで、日本からも購入できるようになるのは少し先になりそうです。自分も含めハードウェアウォレットマニアみたいなビットコイナーもいるので、そういう人は多分絶対手を出してしまうと思います。


BitoEX

BitoEXのファミマでのビットコイン購入についてはこちらの記事で詳細にレポートしましたが、 BitoEXは他にもオンラインのビットコイン購入、ウェブウォレット、デビットカード、企業や金融機関へのコンサルや委託業務など幅広く展開している台湾の総合ビットコインプラットフォームといった感じです。

また、台湾だけでなく、国際送金などのエリアで海外展開も考えているようで、日本の市場にもかなり大きな興味を示していました。

 

DiQi

 

DiQiは台湾大のPh.Dや院生を中心とした学生ベンチャーです。10人以上の生徒が、大学のすぐ近くのキャンパスで日々開発にいそしんでいます。

GeecoinというAltcoinを開発しており、独自のマイニングの仕組みや、Counterpartyのように独自トークンを発行したり出来ます。NXTのようなものと考えるとわかる人にはわかりやすいかもしれません。

 

そのGeecoinをベースとしたウォレットやAPIを公開しており、またBlockchain as a serviceとしてプライベートチェーンのような技術を利用して、金融機関へのソリューションの提供も考えているようです。

 

Maicoin


MaicoinはBitoEXと並んで台湾でビットコインの売買を提供している会社です。おそらく台湾のビットコイン系企業で唯一VCなどからの投資が入っています。

 

CEOのAlexは生まれは台湾ですがカリフォルニア育ちの人で、シリコンバレーや中国などで事業の経験を積んだ後、現在は台湾のペイメントの分野に目をつけMaicoinを創設したそうです。

また、現在は台湾の金融機関や企業と、Ethereumベースのコンソーシアムチェーン(プライベートチェーン)を開発中ということで、日本で言えばテックビューロがZaifとMijinでやっていることとほぼ同じ戦略を台湾で行っているようです。(ちなみにZaifやMijinについても情報共有しておきました)

 

その他(Bitcoin meetup, Ethereum meetup, 国立台湾大学など)

 
これらの企業の他にも定期的にビットコインミートアップが行われており、またつい先日初めてEthereumのミートアップが開かれたことなどもあり、Ethereumに興味を持っている人も少なからずいるようです。

他にはまだプロダクトは出てませんが、サプライチェーンの情報管理、追跡などをブロックチェーンに記録しようとするプロジェクトに取り組んでいる人もいました。

 

また、別記事にも書いた通り、国立台湾大学でビットコインやブロックチェーンに関する授業も行われており、このクラスの生徒の一部はDiQiで働いていたり、教授は金融機関や政府のパブリックヒアリングに呼ばれたり、少なからず影響力を持っています。

 f:id:coinandpeace:20160505194938j:image
台湾大で講義した時の写真

台湾ビットコイン市場の特徴

 

今回台湾に行くことになったのはそもそもTwitterで投票した結果だったりするんですが、
 

 

台湾のビットコイン事情はほぼ全く知りませんでした。知ってたのは、ファミマでビットコインを買えることと、ビットコイン違法報道が出ていたくらいでした。今回現地で事業者、関係者などに話を詳しく聞いたところ、台湾のビットコイン市場に以下のような特徴が見えてきました。

 

一通りのビットコインエコシステムが整っている

 
ベトナムでのビットコイン事情についても過去にレポートしましたが、ベトナムはまだビットコインエコシステムと呼べるものがまだ出来ていませんでした。

一方、台湾にはビットコインを買えるウェブサイトや場所、ウォレット、ビットコインを使うためのサービス、アルトコイン、プライベートブロックチェーンソリューション、2.0系の応用、エバンジェリストの存在、など小さいながらもビットコイン、ブロックチェーンのエコシステムがすでに出来上がっています。

 

現地の人たち中心の動き


もう1つ特筆すべきところは、上記のようなエコシステムが現地の台湾人たちにより形成されているところだと思います。ベトナム、シンガポールもそうでしたし、日本も特に初期はそうだったのですが、外国出身のビットコイナーが現地のビットコインスペースをリードするケースが結構よくあります。別にそれ自体は悪いことでもなんでもないですが、その国々の固有の特徴を出したり、規制機関などと連携していく上ではいかに現地の人たちが事業参加していくのかは重要だと思います。

その点で、台湾の事業者は従業員も含めてほぼ完全に現地のローカル人たちがやっていたのが特徴的でした。というか外国人ビットコイナーが台湾にはほとんどいないのかもしれないです。

 

f:id:coinandpeace:20160505213642j:plain

 

関係者の平均年齢が高い 


現地の人の参加が顕著と言いましたが、もう一つの特徴は事業者、エバンジェリストなど含めて平均年齢が割と高く、いわゆるおじさんたちが先頭にたっている印象がありました。もちろん台湾大学の生徒のように若い人たちも関わってはいるのですが、事業者もほぼ全員が30代後半以上くらいの人たちに占められてました。

日本も別に若い人ばかりではなく、おっさん達(失礼・・・笑)が頑張ってるところもありますが、事業者、起業家、その他ビットコインに興味がある人たちで若い人たちもたくさんいると思うので、台湾は関係者の平均年齢高いなーと思いました。

 

 

商売上手

 

事業者の平均年齢が高いことにもつながりますが、実際の商売としてビットコイン事業に取り組んでいるビジネスマンが多かったです。ファミマとビットコインを利用したオンラインゲーム購入についても記事にしましたが、ビットコインを使用する需要はどこにあるのか、収益ポイントがどこなのかを理解してきっちりビジネスに落とし込んで黒字化している企業も多かったです。(逆に赤字だとすぐにやめてしまうというような発言もありました)

 

プロジェクトの多様性

 

自分が台湾のビットコインスペースで特に印象強かったのが、日本より事業に参加している人数などは少ないのですが、日本のように取引所に事業が集中しておらず、それぞれの強みや興味などにあわせた様々なプロジェクトに取り組んでいてるという、言うならばプロジェクトの多様性です。

日本のビットコイン事業といえば何だかんだ取引所中心ですし、つい先日も新たに2社取引所ビジネスに参戦する企業が出てきたり、なぜかわからないですが取引所のビジネスに興味を持つ人がほとんどで、競争は激しいです。一方、台湾ではビットコインの購入が出来るのは、BitoEXとMaicoinのみでその他の事業者はそれぞれ別のことをやっていて、特に取引所には興味がない感じでした。自分個人としてもずっと取引所などのインフラではなく、ビットコイン2.0のトークンの領域に取り組んできたこともあり、このようなプロジェクトの多様性、各社の着眼点は非常に素晴らしいと感心しました。

ちなみに、取引所があまり育たないのは、台湾が中国語圏だということもあり、本気でトレードしたい人たちはOKCOINやBTCCなどすでに確立された中国の巨大取引所を利用してしまうため、もしかしたら国内の取引所が育ちづらいところが要因の一つとしてあるのかもしれません。

 

法律への関心

 

自分が台湾に言ったタイミングが、ちょうどビットコイン規制に関する政府との初めてのパブリックヒアリング(公聴会)の直前だったということもありますが、ビットコインの規制、また日本での規制に関して自分も現地の人からかなり細かく質問されました。もちろん日本の事業者も法律や規制への関心は高いとは思いますが、技術やプロジェクトよりむしろ法律や規制の方に興味がある、くらいの人もいたのがちょっと印象的でした。まあ実際の事業として参入している人が多いという話もしたので、ビットコインの規制がどうなるかというのは彼らにとっては文字通り死活問題だからでしょう。


法律への関心は強かったですが、同時に共通の認識みたいなものは実はあまりなく、法律の解釈についても各事業者でまちまちでした。これから政府や金融機関を絡めてそのあたりが整備されていくのでしょう。

 

金融機関などの動向


日本も金融機関などがブロックチェーンの実証実験にかなり参入してきていますが、当然台湾でもこのような動きは始まっているようです。自分がインタビューした企業もそれぞれ政府、銀行、その他の企業などとの接点はなにかしらあったようで、これからどのように既存の機関とコラボレーションしていくかというところは、ビットコイン、ブロックチェーン企業の共通の関心としてあったと思います。

 

さて、上記のような特徴が台湾のビットコイン業界にはありました。おそらく台湾特有の特徴もありますが、業界の全体図を考えると多くの部分で日本市場との類似点も多かったです。同時に日本のビットコインスペースとの面白い相違点も見えてきました。

台湾と日本のビットコイン業界の相違点は?

 

ビットコインが使える店はない


まず最も目についた違いの一つが、台湾ではビットコインで直接支払いができる店舗がないということです。

これは複数の人に聞いたところ、ビットコインを店舗で支払い手段として使うことは台湾の法律に抵触するリスクがあるからとか、単純に利益にならないから、など諸説あるようですが、ともかく台湾ではビットコインで支払える店舗はありません。ありませんし、全体的な印象としてみんなそこまで関心がないようでした。

これはcoincheckの頑張りもあり、ビットコイン支払いを受け入れる店舗が1000以上に上り、急拡大している日本とは対照的です。


VCからの投資はほぼなし

 

Coinbase、21.incoなどシリコンバレーの巨額調達だけでなく、先日bitFlyerの30億円程度、テックビューロの7億円の調達のニュースが出て、日本でもかなりの額の資金を調達する企業が出てきています。一方、台湾のビットコイン業界ではVCからの投資はまだほぼないようで、それぞれの企業が自己資金などで操業しており、同時にVCからの投資などなしでもすでにビジネスとして黒字化して成立しているところが多かったのも特徴的です。

逆に日本はエンジェル投資家やVCなどからの投資はありますが、まだビジネスとして黒字化している企業はまだあまりないですし、台湾は分散化に対する思想や新しい分野への挑戦という文脈だけでなく、経験豊富なビジネスマンがビジネス機会を強く意識して参入している感がありました。この実利へのこだわりみたいなのはむしろ見習いたいくらい。

  

海外市場への拡大

 

日本でも少しずつ海外進出を計画している企業も出てきていますが、今の時点で海外で実際のビジネスを稼働させているビットコイン関連企業はありません。一方、台湾は台湾自体の市場規模が小さいことなども理由に、WagecanやBitoEXなどすでに海外向け、もしくは海外でビジネスをしている企業が多かったです。

日本は日本市場自体がそこそこの規模があるし、今ちょうど拡大しているので、しばらく国内向けにビジネスをやる事業者の方が多いでしょうね。

 

一般メディアでのビットコインやブロックチェーンのカバーはなし

 

日本は良くも悪くも、渋谷にオフィスがあったMt.Goxのせいでビットコイン自体の知名度は上がりました(悪い面の方が大きいけど)


台湾の場合は特に現地でそういう大きな事件が取り上げられたわけでもないですし、最近は割と好意的にメディアに捉えられることも多い日本と違い、ほとんどビットコインやブロックチェーンに関する報道はなく、そもそも知名度自体が低いようです。


ちなみに、「台湾ではビットコインが違法」という報道が英語のビットコインメディアでも報道され、自分も一部勘違いしていたのですが、あれはどうやら台湾の一般メディアが間違った情報を報道して、それが海外にも伝播した結果だったようです。というわけでビットコインを使用すること、ビットコイン事業をすること自体は台湾では違法ではありません。違法なら今回自分がインタビューした人たちみんな捕まりますね笑

 

取引所と銀行の関係

 

もう1つ面白かったのは、現地の法律などの関係で日本と台湾ではビットコイン取引所と銀行の関係性が違います。


台湾では、ビットコイン企業自体が銀行口座などを通してユーザーの資金を預かることは禁止されているようです。ユーザーの資金を扱えるのは銀行だけで、BitoEXやMaicoinもお金の預かりの部分は現地の銀行にお願いして処理しているようです。ビットコインの販売所だけで、ユーザー同士の取引が可能な取引所が存在しないのもここらへんもどうやら要因になっているようです。

規制の話などとも関連しますが、台湾の場合は日本などよりさらに既存の金融機関への譲歩や依存が余儀なくされる可能性があります。

 

 

まとめ&今後の展望は?

 

というわけで、台湾のビットコイン業界の特徴と日本との違いを考察してみました。


こんな言い方をするのもあれですが、行く前は期待値はそこまで高くなかったのですが、いざ行ってみると、関係者の熱意、小さいながらエコシステムがすでに出来ていること、台湾大などの若い層の参入もあること、今後規制などについても前進していく可能性が高いこと、などかなりポジティブな要素が多かったと思います。

台湾自体は市場は小さいですが、それゆえにすでに海外展開を事業の根幹に据えているところも多く、これからもしかしたら中国や東南アジア、日本も含め台湾のビットコイン系企業が積極的に進出して行く可能性もあるのではないでしょうか。自分は中国語話せないので(勉強中)、今回現地の人とはコミュニケーションは基本全て英語でしたが、台湾大生も含め英語が上手く、グローバル適性がある人が強いとも感じました。


最近はSから始まる凋落した大きな日本企業が台湾の企業に買収されるというニュースもありましたが、もしかしたら10年後に台湾のビットコイン企業が結構アジアで重要なポジションを持っていたりする可能性もあるかもしれませんね。

 

日本にも個人的、もしくは事業的に興味がある人も多かったので、日本のビットコイン企業にも無関係ではないでしょう。


というわけで3回にわたるビットコイン in 台湾シリーズ完結です。泊まるところも最初の3日しか確保せずに行って、特に予定もなかったのですが、ここまで詳細な情報を仕入れられて非常に充実してました。これだけ詳細に台湾のビットコイン事情レポートしている奴なんて、日本初というか多分世界初ですよ、本当に!まあ自分の実力というか親切な台湾ビットコイナーのおかげでしかないですが笑

 

とりあえず自分も個人として国際競争力つけられるように中国語を真面目に勉強します。

それでは。

 

P.S 先日「ビットコイナー反省会」(ポッドキャスト)のエピソード4を放送しました。台湾の話も一部話したので、まだ見てない人はそちらも是非聞いてみてください。自分で言うのもなんですが、中々クオリティの高い回に仕上がってますよ笑

 

www.youtube.com

 

 

Donate with IndieSquare

 

***

このブログではトークンを使った実験として、寄付+トークンという切り口で実験をしています。この記事が役にたった、もしくは面白かった場合は、上記の寄付ボタンをクリックして、IndieSquare Walletからビットコインで是非寄付をお願いします!このブログの独自コインCNPCOINをお返しします。

 

CNPCOINを集めると、一部の人に限定公開している自分のメルマガや英語のカスタマーサポート連絡補助+αなどに使えます!CNPCOINについて詳しくはこちらのページを参考にしてください。(もしくはサイドバーのCNPCOINについてという部分)

 

また、寄付金額により、お返しのCNPCOINのレートは変わっていきます。(初期に応援してくれる人ほどインセンティブが)最新のレートについてはこちらのスプレッドシートで確認できます。