ナカモトサトシの正体!? Nick Szaboのインタビューまとめ
少し前に岩手を自転車で疾走しながら聞いていた、Nick Szaboのインタビューポッドキャストが非常に勉強になったので興味深かった発言、コメントをかいつまんで紹介し、自分の考えを述べてみたいと思います。
その前にまずNick Szaboとは誰?という話ですが、暗号業界ではかなりの有名人で、元々のスマートコントラクトという概念と名前も彼が考案したことで有名です。また、1998年にBitgoldというビットコインのベースになったとも言われる、分散型の通貨のアイディアを提案したのもこの人です。Szaboはビットコインのsatoshi的な感じで、Etherの単位の一つにもなっていますね。
詳しくはWikipediaのページを読んで欲しいですが、彼の暗号技術への理解度、思想、人間性を考えると、彼こそがナカモトサトシ(Satoshi Nakamoto)の正体ではないか?と本気で考えている人たちもいるほどです。しかもイニシャルも近いしね・・・。S N → Szabo Nick??
Satoshi-Nakamoto (Image Courtesy www.ap.org)
ではそんなスーパー暗号エキスパートへのインタビューの発言の一部を以下に紹介します。また、基本的に発言の意味を取り違えたり、語弊のないように気をつけていますが、ニュアンスが間違って伝わったりする可能性もありますので、そこはご注意を。
ビットコインの成功の秘訣はなんだと思うか?
- Sybil AttackのPoWの使用による解決(技術的ブレイクスルー)
- アイディアだけでなく、ソフトウェアの部分まできちんと作ったこと(Bitgoldはアイディアベースだけ)
- 2008年のリーマンショック、金融危機などで通貨、金融に関する関心が高まっていたこと
ビットコインについて驚いたこと
- 熱狂的なビットコインマニアともいえる人たちの出現
興味深いことにSzaboは最初ビットコインについて懐疑的だったと語っており、ビットコインの熱狂的な支持者、エンスージアストがここまでビットコインをメインストリームに持ち上げていったのは驚きだったと語っています。
ビットコインの強みは?
- 金融機関からの独立
- グローバルで国境に依存しない性質
ビットコインの強みとして上記の2点を挙げていました。
VISAやPaypalは金融機関とどっぷり関連しているのに対し、銀行がいなくても成立、完結 する仕組みというのが特徴的。
また、Visa、Paypalは最終的に国の規制、政治的判断などにより送金が止められたり、使えない国があったりする一方、ビットコインはそのような制限に縛られないのが大きな違いだと述べています。仮に戦争している国同士であってもビットコインは送れるのです(まあ規制などで送金をすごい難しくすることは可能だと思いますが)
上記のような特徴は、ビットコインのネットワークが計算力により作り出す自動化されたセキュリティーがベースとしてあり、既存の金融機関(VISA、Paypal)などでは会計士、弁護士などの大量の人的リソースを投入することでセキュリティーや正確性を生み出しているのと対照的だ、という発言をしていました。
スマートコントラクトは国境を越えた契約を安価にする
これは自分にとっては目から鱗だったのですが、当たり前といえば当たり前なのですが、スマートコントラクトは国境を越えた個人間の間でこそ威力を発揮するという発言です。
例えば、自分がブラジルの人に仕事を依頼したとして、元々の要求に対して全然アウトプットが見合ってない時などに、依頼に対して支払う支払わない、などの訴訟沙汰になったとします。これを既存のシステムを使って解決しようとすると、国によって当然法律は異なりますし、弁護士を雇ったりするとコストはおそらく簡単に何百万円くらいになると想定されます。
こういう国境を越えた個人間の簡易契約として、スマートコントラクトが役に立つというわけです。
ビットコインは国境を越えた安価で直接の送金を 可能にしたわけですが、それだけでは例えばグローバルに単発の仕事の依頼などをするのには不十分です。商習慣が違ったり、信頼関係のない相手とビジネスをする時には、やはり一定の強制力のあるルール(契約)を結ばないとトラブルも多いと思いますし、スマートコントラクトはそこの部分をカバーできるな、と。
今後、ビットコインとスマートコントラクトを併用することで、よりグローバルでパーソナルなアウトソーシングなどが出現すると思われます。そうすることで雇用の概念なども変わっていくのでしょうね。
ビットコインとEthereumなど別チェーンとのすみわけ
ビットコインはSmart money。スマートコントラクトなど複雑なコントラクトを直接実行するのには向かない。コントラクトはEthereumみたいなものの方が柔軟で色々対応できる。最終的には、ビットコインのブロックチェーンを中心に、サイドチェーンを通して用途に合わせて別のブロックチェーンを使用する形が理想ではないか。
SzaboはEthereumへの期待値が結構高いようで、本人もEthereum周りで自分のプロジェクトを今やっているようです。
Bitcoin=ポケット計算機、Ethereum=多用途コンピューター、という比較発言もありましたが、ビットコインはセキュアで(比較的)安定しており、やることをきっちりやる反面、スマートコントラクトなどには向かない、と。
なので、サイドチェーンを使ってビットコインのセキュリティーを真ん中におきつつ、例えばより匿名性の高い送金をしたい、高速送金がしたい、価格変動リスクを軽減したい、複雑なコントラクトを作りたい、などの場合、ビットコインのブロックチェーンとつながった別のブロックチェーンを有効活用していくのがいいのではないか、ということです。
自分も同様の考えですが、サイドチェーンはまだ出てきてないので、来年以降サイドチェーンが稼働するようになった時にどうなるか楽しみにしています。
ブロックチェーンは2重構造であるべき
セキュリティーレイヤー(ブロックチェーン)の上に、より効率的な支払いを可能にするレイヤーを据える2重構造が現実的
小さい額の送金に関しては、ChangeTipのようにサーバーで処理して、ある程度の額がまとまった時にブロックチェーン上に記録する2重構造が効率性、スケーラビリティの観点からしても現実解なのでは、ということです。
私も基本的に同意ですが、ライトニングネットワークのように最終的には上のレイヤーもブロックチェーンの延長として信頼不要、カウンターパーティリスクなしで出来るようになるのが、さらにその上の段階の理想だなーと。
スマートコントラクトのオラクルの分散化について
すでに信頼できる事実の認証局(オラクル)がある場合、それを分散化させて一から作り直す必要はない
これは結構意外だったのですが、SzaboはAugurのように別にオラクルまで分散化させる必要性はないのではないか、という話をしています。
例えば、出生届けなどは医師などの専門家の判断が結局必要になり、そこの判断までも分散に非専門家がやる意味がないと。(というか素人に高度な判断が出来るのか)専門家の判断をハッシュしてブロックチェーン上に記録させれば、それで十分ではないのか、というような考えですね。
ブロックサイズの議論について
ビットコインのセキュリティーを軽視すれば、そもそもビットコインを使う意味はなくなる。もしビットコインにVISAのようなスピードや効率性を求めるなら、最初からVISAでもPAYPALでも使った方がいい。ブロックサイズの問題は、パフォーマンスVSセキュリティーの大きな議論の一つでしかなく、他にも課題はたくさん存在する。
XTに関しても、51%攻撃の一種であって建設的なやり方ではない、といったかなり厳しい見方でした。
自分も結構前からビットコインに直接的にVISAのようなスピードや性能を求める必要はないと思っている派ですが、今のブロックサイズは確かにスケールするには限界のあるサイズだとも思うので、XTのように強行的に押し通そうとするのではなく、議論を通してどのような方法がブロックサイズ引き上げに関して適切かコンセンサスを作って欲しいですね・・・。(まあそんなちんたら議論してたら永遠に決まらないっていうのが、XT派の見方なのでしょうが)
他にも興味深い発言が色々あったので、英語が聞ける人は聞いてみて損はないと思います。
それでは。
※※※
このブログではトークンを使った実験として、寄付+トークンという切り口で実験をしています。この記事が役にたった場合は、カウンターお財布などのCounterparty対応のWalletからビットコインで寄付してください。詳細についてはこちらの記事からどうぞ。このブログの成功を読者と分け合うwin-winの関係を築けるか、という実験です。
また、寄付金額により、お返しのCNPCOINのレートは変わっていきます。最新のレートについてはこちらのスプレッドシートで確認できます。
1ABG119jVm2jRw6sz4ewurc5jFRJkwu6aj