ビットコインダンジョン2.0

Bitcoin (ビットコイン)やブロックチェーンを技術に詳しくない人たちのために、面白おかしく、そして真面目に語ります since 2014

まだビットコインが詐欺だと思っている人へ

最近国内のメディアでもビットコインについて好意的なものが増えたり、技術として認める傾向がみられます。

 

先週の東京ビットコインミートアップにもNHKの取材が来ていました。私は遅く行ったのでほとんど何も関わってはいないですが、どうやらギリシャのデフォルト危機と政府に管理されない通貨ビットコインを絡めたかったようです。

 

ビットコインにとってはいい傾向と言えますが、同時にまだ多くの人はビットコインとかブロックチェーンとかを知らないですし、聞いたことはあっても詐欺だと決め込んでいる人もまだ多いと思います。

 

「ビットコインは詐欺ではない」という趣旨の記事は業界内の他の人も書いていますが、今回自分の言葉でもビットコインがなぜ、複雑な仕組みの詐欺ではないかについて考えてまとめてみようと思います。おそらくこの読者の大半にとってはなんで今更こんな話をするのかと思われるかもしれないですが、まだまだビットコインにとっての一般の人の勘違いは深いと思うのです。後は単純に前からこのトピックについては自分でまとめてみたかったからですw

全くわかってない人、初めてこのブログを読む人安心してください。私は難しい技術の話などはしないので笑

 

Step 1 よくある勘違いをまず正す

2014年にMt.Goxの一連のスキャンダル、報道がありビットコインに関してネガティブなイメージ、そしてもっと言えば全くの誤解が一般の人に植えつけられてしまったと思います。まずビットコインに関してニュースで聞いたことがあるだけ、くらいの人が持ちやすい間違った思い込みとして、以下の三点があると思いますがまずそれぞれさくっと正したいと思います。

 

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ビットコインはMt.Goxにより作られ、管理されていた電子マネー

これがおそらく最も一般的にまだ勘違いされていることだと思います。確かに、「システムに弱いところがあって・・・、ビットコインが失くなって・・・」などとたどたどしい日本語で半笑いの外国人の会見を見たら、「あ、よくわからないけどこいつが首謀者で、こいつの会社が作ったポイントみたいなものだろう」と感じてしまうのが当然だと思います。私も最初はそう思いました。(ちなみに会見のビデオはこちら

 

Step2で説明しますが、ビットコインはMt.Goxが作ったものではありません。Mt.Goxは単純にビットコインをドルなどで売買できる取引所、マーケットを提供していたにすぎません。まずここの勘違いをなくすことが大事です。

 

ビットコインは消失した

何十億円ものビットコインが消えてなくなったというのも誤解です。会見でビットコインがなくなったと聞いて、「よくわからないポイントのシステムが壊れて、この世から存在しなくなったんだろう」と思うかもしれませんが、これは間違いです。ビットコインは消えてなくなったわけではなく、盗まれたというのに近いと思います。Mt. Goxの管理下にあったビットコインが誰か他の人の手に渡っただけです。ビットコインは消えたりはしない半永久的なものですし、それが革新性の一部でもあります。

 

ビットコインはナカモト何とかという日本人により作られた

そして最後にこのナカモトサトシという名前の存在が、日本の一般の人の勘違いをさらに加速させていると思います。ビットコインはナカモトサトシを名乗る匿名の人物が投稿した論文を元に作られました。このナカモトサトシなる人物が誰かは未だにわかってないですが、ほぼ間違いなく日本人ではありません。

 

ナカモトサトシという名前を聞いて、「あ、やっぱりあのMt. Goxという企業とかと関連がある日本人が日本国内のために作った」と勘違いというか連想してしまっている人も案外いるかと思いますが、これは間違いです。 

 

さて、それではStep2ではもう少し踏み込んで、なぜビットコインが詐欺ではないのか、詐欺だと主張する人たちに反論する形で説明しようと思います。

 

Step 2 ビットコインをかじったレベルの人の詐欺レッテルに反論

 

Step 1では明らかな勘違いを正しました。次のステップは、ビットコインの表面的なキーワードだけ引用して、「円天と一緒」「信頼がおけない」「ただの投機商品」など本質的な仕組みの理解をしないまま批判する人も多いと思います。(まあこれだけ複雑なものだと、概要を正しく理解するのも一苦労なのでそこまで非難とかはしませんが)

一個一個彼らの主張を切り取って、それがどのように間違っていると言えるのか、もしくは反論できるか考えてみましょう。

 

www.youtube.com

※ちなみにこれがYoutubeで「ビットコイン 詐欺」と検索した時に一番最初に出てくるビデオです。

 

ビットコインは円天と一緒

これはおそらく最もよく言われるビットコインに対する批判/勘違いだと思います。

Step1で少し説明しましたが、ビットコインの最も大きな特徴として、特定の管理主体のない分散型のネットワークであると言えます。つまり、ビットコインを発行したり、管理したりする会社や政府などが存在しないということです。これが特定の企業が管理していた円天との決定的な違いです。そしてこの「分散」というキーワードがビットコインの大きな革新性の一つなのです。

 

この時点で「ビットコインは円天と一緒」→「円天は詐欺だった」→「なのでビットコインも詐欺」という主張は完全に崩れます。主張というよりは完全な誤解ですね、これは。ビットコインには特定の管理主体がいないということは、システムをコントロールする詐欺師とか悪質な企業とかそういうものがいないのです。詐欺のように、最終的に独り勝ちする中央の存在がいない(しようと思ってもできない)ということは、ビットコインは実は詐欺には向かない仕組みとも言うことができるかもしれません。ポンチースキーム(詐欺)だという批判もこの時点で成り立たなくなりますね。

 

ただし、Step3でもう少し詳しく書きますが、管理主体がいないから絶対に詐欺ではないとは限りません。ビットコインはネットワーク参加者全体により監視され、コントロールされているということもありますが、その点についても後述します。

 

なお、ビットコインと円天の比較はこちらの記事でもっと詳細に説明されています。

 

ビットコインは信頼できない、危険である

円やドルもそうですが、信頼できる機関が発行する通貨だからこそ信頼できるし、価値があるというのが今までの常識だったと思います。そしてこの既存の視点からビットコインを批判する人も多いです。

 

確かに信頼できる機関が発行したものではないと信じられない、という主張は筋が通っているような気も一見します。例えばめちゃくちゃうさんくさい業者が発行しているポイントシステムなどに、大金をつぎ込もうとは私も思いません。

 

ただし、この既存の常識を元にしたビットコインへの批判はピントがずれています。そういう中間の信頼できる機関が存在しなくても、見ず知らずのネットワーク参加者のみで成り立つ仕組みを初めて作ったのがビットコインだからです。信頼という概念を大きく変えるほどの革新とも少し大げさに言えると思います。

 

ビットコインみたいな中央管理主体がいない通貨が信頼できるわけがない、というのはつまり、ライト兄弟に空が飛べるはずがないと飛行機を見ないで批判していたり、馬より早く走る機械(自動車)が作れるはずがない、とフォード氏に言っているのに近いと私は思います。○○が出来るはずがないと批判するのではなく、○○が出来るようになったことを理解する(少なくとも理解しようとする)べきなのです。


なので、ビットコインは信頼できない、というのはそれ自体がずれているというか、信頼なしでも価値のやりとりができるネットワークを作り出したことに大きな意義があると私は反論します。信頼できないのではなく、ビットコインの仕組みでは信頼は不必要になるのです。

 

とはいえ、ビットコインももちろんまだまだ完璧な仕組みではありません。そのことについてもStep3で後述します。

 

※なお、ビットコインがどのような仕組みで上記の問題を解決するかの説明はこの記事でははしょります。仕組みについてはこちらの記事がめちゃくちゃ長いけど、わかりやすいかと。このブログでももちろん一部仕組みについては説明しています。

 

ビットコインには価値の裏付けがない

これも少しかじった人が言う批判の一つだと思います。上記のビデオだと、円などは政府への信頼に基づいて価値が維持されている、という発言をしていたと思います。一方、ビットコインは管理主体がいないし、価値の裏付け(信用)もないと。

(まあ本当に政府を信頼できるのか、ギリシャのケースを考えてもこの考え自体に反論することも可能だとは思いますが、とりあえずそれは別トピックです。)

 

確かにビットコインの実験が始まった2009年には、ビットコイン自体に少なくとも市場の金銭的な価値はありませんでした。そこから初めて物好きな人がビットコインでピザを買ったことから初めてビットコインに市場での価格がつけられたわけですが、私は少なくとも現在のビットコインに価値の裏付けがあると下記の3点の理由から主張できると思います。

 

  1. ビットコインの入手にはコストがかかる

    よくビットコインってそもそもどういう風に作られているのという質問を初めての人に聞かれますが、マイニング(採掘)というビットコインの最も核心となるプロセスを通して新しいビットコインは生成されます。マイニングの仕組みなどについては、同じくこの記事では全ては説明できませんが、簡単に言えば、マイニング専用の機械と、それを稼働させるための大量の電力を使うことで初めてビットコインのマイニング(採掘)が可能になります。つまり、大切なポイントはビットコインを手に入れるのはタダでも簡単でもないのです。しかもこのプロセスは年々競争が激しくなっており、現在だといわゆる一般の人には参加は限りなく難しくなっています。

    金やダイヤモンドも入手が簡単であればそこまで高い価値は認められていないと思います。入手が難しい、コストがかかるものというのはそれだけである意味一定の価値の裏付けがあると言えると思います。


  2. ビットコインには希少性がある

    上記の入手が難しいのと関連しますが、ビットコインの最終的な供給量は2100万ビットコインと決まっています。数が限られている=貴重だと言えます。ここらへんは同じく金やダイヤモンドにも全く同じ説明が当てはまりますね。

    逆に供給がたくさんあるもの、無限に近いものは価格が低くなりますよね。例えば水や空気は無限ではないですが、少なくとも日本では供給がたくさんありますので、比較的安価なわけです。(空気は富士山とかに行けば有料で売ってますね)

  3. ビットコインには付加価値、有用性がある

    ただし、金やダイヤモンドのように、入手が困難で供給量も限られているので価値の裏付けがあると直接は主張はできません。金やダイヤモンドは付加価値というか、色々なものに応用できるからこそ価値があると主張できるからです。石油と比べるのがこの場合一番適当かもしれません。石油も同じく入手が困難で、供給も限られていますが、何よりガソリンや繊維など広範な領域に応用可能だからこそ、石油には莫大な価値が認められているわけです。

    では、ビットコインの場合はどうなのか。ビットコインそのものはお金かモノかもわからない少なくとも身体的には存在しないものですが、ビットコインを支える土台のブロックチェーンという技術は色々な分野に応用できます。

    ブロックチェーン技術の通貨以外への応用を総称してビットコイン2.0とか言うのですが、例えば文書などのデータの改ざん不能な記録、追跡(Factom)、独自コインの発行を利用した金融商品トレードへの応用(Counterparty)、分散型Dropbox(Storj)、ブロックチェーン上で実行される分散型契約(Smart Contract)など様々な分野で破壊的イノベーションを起こす可能性のあるユースケースがすでにたくさん考案されています。そしてそれらの様々なプログラムを動かす燃料のような存在もビットコインは果たしているのです。

    (※それぞれのプロジェクトの説明ははしょりますが、このブログでも一部説明していますので検索して参考にしてください。)

 

ビットコインは匿名性があり、犯罪を助長する

 

この主張はそもそもビットコインが詐欺であるという直接の主張にはならない気もしますが、ビットコインは犯罪くらいにしか使われないものなので、それを推奨するのは詐欺のようなものだ、という人もいるかもしれません。

 

まず一つにビットコインは完全に匿名ではありません。むしろ匿名性が低いというか、全部筒抜けのような仕組みなっています。過去に行われた全ての送金記録はブロックチェーンという公共台帳のようなものに記録され、全てのトランスアクションをさかのぼって追跡することができます。おそらくこう言われてもピンと来ないと思いますが、もしあなたの素性が自分のビットコインアドレス(メールアドレスみたいなものだと思ってください)と結びつけられてしまうと、あなたの過去の送金や受け取り金額が全てみんなに筒抜けになってしまう可能性があるのです。

 

つまり、犯罪にビットコインを使った場合、後でそれを追跡して全部証拠がバレバレになってしまう可能性があるということです。それなら犯罪者は現金で取引した方がよっぽど匿名性が高く安全とも言えます。確かにビットコインは犯罪に使われることもありますが、必ずしも犯罪に向いているとは言えないのです。

 

また、このオープンな性質もビットコインの特徴であり、詐欺ではないと言える根拠にもなります。ビットコインはオープンソースプロジェクトであり、全てのソースコードが公開されています。つまり、悪質なウィルスを知らず知らずのうちに仕込んだり、不正を働くのが難しい(ほぼ不可能)ということです。詐欺は基本的に秘密とか情報を閉鎖的にすることで成り立つことが多いと思いますが、ビットコインは全てオープンで公共的です。オープンで透明なものは詐欺に使いづらいと思います。 

 

Step3 仕組みを理解した上での批判にコメント

Step1、Step2に関しては、あまりわかってない人たちの勘違いを正したり、反論したりしました。

 

ただし、一部きちんと仕組みを理解した上で、ビットコインは詐欺的だとか、上手く行くはずがないという人たちもいます。そのような意見は必ずしも間違っていないですし、本質をついているところもあると思います。

 

例えば、ビットコインはスケールしない(一般の人たちみんなが使うようなシステムを構築できない)という批判があります。確かに現状のビットコインにはスケール性のところに課題はありますし、現在そこの課題を解決すべく世界中でビットコイン技術者たちが一生懸命試行錯誤しているのも事実です。

 

また、管理主体がないとはいえ、基本的に先に参入した人たちの方が有利になるような仕組みのため(少なくともビットコイン価格においては)、参加者全体で詐欺を行っているようなものという批判もあります。あまり言いたくはないですが、確かにそのような側面から活動している人もいるにはいると思いますし、先行者利益があるのも否定はしません。

ただし、自分も含め技術や新しいビジネスモデルの構築などに真剣に取り組んでている人たちも世界中に数多くいて、ビットコインの価格だったり投資的側面よりこの技術がもたらす可能性やポテンシャルの方が重要です。

 

また、Step1、Step2で説明した通り、ビットコインのコアな仕組みの部分は詐欺ではないですし、詐欺になりづらいような仕組みになっているという説明をしましたが、ビットコイン関係の事業をしている人の中で悪意があったり、詐欺が行われたりは実は日常茶飯事です。

国内でも価値があまりないコインを作って、それを高額で売りつけたりするケースがよく見られます。ただし、これは最終的にはビットコインやブロックチェーンという技術を利用する人間の問題で、技術とは切り離されて考えられるべきです。

最後に

結構長くなってしまいましたが、もしビットコインを詐欺だと思って無視している人は私は非常にもったいないと思います。アメリカを中心に金融の大手や、IT大手などが活発にこの業界に参戦しています。(私が寄稿したこちらの記事も参考にしてください。)

 

もしこの記事を読んでじゃあどこにもっと情報があるんだよ、という人はビットコインについて勉強できるサイトのまとめ記事や、ビットコインを購入するための取引所の比較も参考にしていただければ幸いです。

 

それでは。

 

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このブログではトークンを使った実験として、寄付+トークンという切り口で実験をしています。この記事が役にたった場合は、カウンターお財布などのCounterparty対応のWalletからビットコインで寄付してください。詳細についてはこちらの記事からどうぞ。このブログの成功を読者と分け合うwin-winの関係を築けるか、という実験です。

 

また、寄付金額により、お返しのCNPCOINのレートは変わっていきます。最新のレートについてはこちらのスプレッドシートで確認できます。

 

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