ビットコインダンジョン

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Synereoの空中分解と悪質ICOのパターンを考える

Synereoはもうダメみたいです…。

 

blog.coinfund.io

 

medium.com

 

日本でSynereoというプロジェクトを追っている人はそこまでは多くないと思いますが、2か月ほど前に5億円の資金を集めたICOからこの1週間ほどで、CTOの解雇、重要なプロジェクトメンバーがプロジェクトを離れるだけでなく、上記の記事でSynereoの開発の裏事情や醜い争いなどが暴露されています。


実際上記の記事がどこまで真実を含んでいるかはわからないですが、Synereo内部で起きていたと暴露されていることは、実は他のプロジェクトにも当てはまることが多く、示唆に富んでるなと思いました。そこで、Synereoの件を例にとりながら失敗する可能性が高い、悪質な、もしくはある種スキャムと呼んでもいいようなものも多いICOプロジェクトに見られる、共通のパターンやリスクについて考えてみようと思います。

 

夢を売ってるだけではないのか?

悪質ICOでやはり一番多いのが、「夢を売っている」、「なんだかわからないけどワクワクさせる」的なプロジェクトでしょう。

 

Synereoのケースで言えば、元々はブロックチェーンを利用した「分散Facebook」というコンセプトからスタートしたSynereoは、次第にイーサリアムのようなDapps(分散アプリ)を作るRchainというプラットフォームを作って行く方向性にシフトしていきました。

そして、当時イケイケだったイーサリアムなどともパートナー的関係を結び、共同でPoSの技術を開発研究している、安全でよりスケール性の高い素晴らしいスマートコントラクトプラットフォームを立ち上げる、その上に当初思い描いていた分散SNSを最初のキラーアプリとして立ち上げ、自分の情報やアイデンティティは自分で守る、そのような時代を実現させる、みたいにすごい意識の高いことを言い始めたわけです。

 

最初の計画が上手く行かなかったと思ったら、風呂敷を広げて、ウェブサイトとかもちょっとこなれたものにしてワクワクさせることをたくさんし始めたわけですね。

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(すでにプロジェクトを解雇された元CTO Greg Meredithが投資家に向けてナプキンに書いたRchainの構想。何だか映画のようにかっこいいことをしていますが、果たしてこれにどれだけの中身があったのか…。※写真は上記の記事の画像から引用)


同様のことはSynereoだけではなく、他のプロジェクトでも見られる現象ですよね。ICOでお金を集めるには現実的に出来ることだけを選択してそれを宣言するというやり方では、多分そんなに何億円も集まることはありません。とりあえず話はでかく、ビジョンについて大きく語り、細かいところはむしろフワフワさせておいて、夢を売っておいた方が支援者や投資家は喜んでお金を投げつけたりするような現状があります。

 

プロダクトはあるのか?

 

そして夢を売ることにも関係性はあるのですが、悪質なICOには大体動くプロダクトは存在しません。

Synereoの場合、Rchainの構想をぶち上げてホワイトペーパーのようなものも公開していたようですが、今回の騒動の中でわかったことの一つに、Rchainの実際のコードやプロダクトといったものはほとんどないようです。(元CTOが追いやられたのも、結局何もプロダクトを届けられなく、開発が遅くなっていたかららしい)

悪質ICOにプロダクトはないのは、もしかしたら単純な技術やチーム力不足かもしれませんし、ICOでお金をたくさん集めることが目標なら、実はプロダクトなんて作らない方がいいのかもしれません。実際に動くプロダクトがあるということは、いいところ悪いところ含めて現実が見えてしまうということで、現実のものを提供してしまったら夢が覚めてしまうということです。ファンと付き合ったアイドルが、一瞬でファンに振られるみたいなそういうのに近いかもしれません笑

知らないからこそ、動くものがないから、そこのギャップを想像して埋めて、勝手にワクワクしてしまう人も結構多いですよね。

 

ヒューマンファクター 人間関係の話

 

これは悪質ICOプロジェクトに限ったことではないと思いますが、最終的にはプロダクトを作ってるのは人間なので、主要メンバーが喧嘩したり、もしくはリーダーシップが不足していたりすると当然会社やプロジェクトは上手く行きません。


Synereoの場合も今回の壮大な空中分解は突き詰めると、CEOとCTOの間の権力闘争みたいなのが今回の分裂の主な理由だったようです。そして問題なのはICOをやる前からここらへんの確執みたいなものはチーム内部ではすでに顕在化していたらしく(チーム崩壊のリスクなどが少なからずあった)それにも関わらずICOを決行して崩壊寸前のチームが5億円ほどの資金を集めた、という事実があったようです。

どのプロジェクトのチームが本当に機能しているかを外から正確に把握するのは難しいのですが、コミュニティーをじっと観察しているとそこらへんのほころびみたいなのが見えることがあります。そして主要メンバーがポロポロ抜けて行ったりするプロジェクトは結構その時点でリスクが高いと思った方がいいかもしれません(Augur、ごほっ、ごほっ

 

チームの内情が見えない場合はやはりプロダクトのアウトプットで判断するのが妥当だと思うのですが、悪質ICOはそもそもプロダクトがないので、外からここら辺を判断するのは至難の業です。(噂話を関係筋から聞いたりなどはあるかもしれませんが)


中央集権化と分散化の幻想

 よくあるICOプロジェクトのパターンに、「完全に分散化された」とか「コミュニティーが主体の」みたいなことを言うものがあります。やはりこの業界にいると、完全に分散化されているのか、信頼が必要になるポイントはどこなのかなどを気にする人が多いので、分散化されているということを大々的にPRするプロジェクトが多いです。

Synereoのケースでも、コミュニティーの参加や、オープンソースで分散化されたプラットフォームを例に漏れずアピールしていました。ただし、元従業員の記事に書いてあるように、実はSynereoのコードは実際はオープンソースになってないものが多く、知的財産権などもコミュニティーではなく、Synereoの運営会社に帰属しているようなよくわからない状態になっているようです(事実関係はここらへんかなり微妙なようですが)

 

正直に言うと、分散化することが必ずしもすべてのケースでいいことではなく、開発のスピードを速めるため、リーダーシップを発揮するためにプロジェクトによっては むしろ意図的に集権化、管理した方が多いものも多いですし、そもそも分散化する必要性のないものを「分散化している」といった類のプロジェクトも散見されます。端的に言えば、「分散化されている」「コミュニティーに意思決定権がある」ということで失敗や崩壊の時へのある種の言い訳やリスクヘッジに使ってるだけじゃないのか、というくらいの悪質ICOも中にはあると思います。
 

 

インサイダートレーディング

実際に証拠はありませんし、違法性などはまた別の問題ですが、告発記事では SynereoのトークンAMPの価格の急激な下落(今回のニュースなどが明るみに出る前に価格が急降下していった)にSynereo開発陣によるインサイダートレーディングがあったんじゃないか、という疑惑を向けていました。

 

実際真実はわかりませんが、誰かは知りませんがこの分裂などを知っていた人が売っていたことは間違いなさそうです。そしてここらへんの噂話はSynereoに限らずそこら中に転がっています。


なぜマイルストーンベースにしないのか? ~約束は破られる~

今となっとはなつかしい、トークンクラウドセール(ICO)プラットフォームにKoinifyというものがありました。GetGems、FactomがKoinifyを利用してセールを行った直後、平たく言えばビジネスをたたんでしまったのですが、Koinifyが採用した非常に重要なコンセプトがマイルストーンベースのICOです。

 

簡単に説明すると、セール前に事前に集めたお金はこの機能やプロダクトを開発するために使います、という詳細とマイルストーンを設定し、そこまでの目標が達成された時点で初めて集めた資金の一部を段階的に解放するというものです。集まったお金はビットコインのマルチシグの技術を利用し、鍵は開発者以外の複数の人に管理され、資金の開放も事前に定めたマイルストーンの達成なしではされない、というスキームです。

 

このようにすることで、開発者による資金の持ち逃げや、無駄なものへの使い込みを防ぐことにもなり、自分はICOにとってこの仕組みは非常に重要なものだと考えていました。


今回のSynereoのケースでは、ICOで5億円集めた直後からチームの分裂のような状況が明らかになっていき、ICO当初宣伝していたRchainを使ったスマートコントラクトプラットフォームの開発がほぼ頓挫してしまったので、返金を要求する投資家もいるようです。ただし、マイルストーンベースの仕組みを採用していないので、集まったお金をどうするかは平たく言えば全てSynereo側の判断次第で、Rchainの技術に共感して支援した人たちにとっては裏切り行為と言っても差し支えないと思います。

 

こういう状況はSynereoだけではなく、最近のICOはもはやマイルストーンの設定すらしていないものが多いです。開始数時間で何億集めた、というようなバブルICO的なものもいくつか見られますが、集まったお金が果たして重要なことに使われるのか、開発が果たして計画通りにすすむのか、そういうものを全部信頼して自分のお金を入れるのはリスクが非常に高いんじゃないかと自分は思ってしまいます。

逆に言うとマイルストーンベースのセールをもうしなくなったのはなぜなんでしょうか。プロダクトがまだ存在しない開発力もまだ実証されていないプロジェクトで、マイルストーンベースの資金調達を採用しないプロジェクトに何億も集まってしまうのはちょっと恐ろしい話ではあります。

 

価格の話ばかりのコミュニティー

Synereoの告発記事でちょっと興味深い発言だと思ったのが、元従業員がSynereoのコミュニティーは価格のことばかりを話すコミュニティーになってしまた、的な発言がありました。

実際自分もICO前くらいにSynereoのSlackに入ってちょろっと様子を見たんですが(ほとんど見てないですが…)、確かにその当時からAMP価格がどうの、とか言っている人が多かった印象を受けました。もちろんそうではない人もたくさん中にはいたと思うのですが、悪質ICOのコミュニティーのようなものではよく見られるような光景の気もします。そもそもの話ですが、ICOで成功するかどうかは実際プロジェクトの成否の可能性とかチーム力とかではなく、いかに投機的な筋を連れてくるか勝負みたいなところがあり、ICOで多額の資金を集めるためにそういう人たちをたくさん集めてしまうプロジェクトは自分の中では基本的に黄信号だととらえるようにしています。

これは自分の持論で色んなところで言ってきたのですが、そもそも自分自身が使わないのにコインだけ買うのはある種間違っていると思いますし、そういう人たちが多いプロジェクトはどうなるかと言えば、pump and dumpの繰り返しのような状況に陥ることも多いと思います。(自分は使わないから価格が上がったら売り抜けようと考えている人が大部分の場合)

 

最後に

今回のSynereoのケースは実は自分は結構残念な話だと思っており、Synereoは元々一回目のクラウドセールに失敗(失敗と言えるかはわからないですが、目標値に到達せず集まったお金も少なった)したんですが、それでやめるのかと思いきや地味にプロジェクトを継続させ、ピボットしてイーサリアムファウンデーションと共同研究を発表したり、低バジェットながら何とか工夫して生き残っててすごいな、みたいな印象があったからです。

 

プロジェクト自体の進捗については1年以上ほとんど追ってなかったのですが、何とか生き残って頑張ってるプロジェクト、くらいの認識でチラチラ見てたのですが、結局は実は何も進んでなく、プロジェクトの最大の達成が、ある種支援者は投資家をだますような形で5億円集めたICOというのは非常に残念です。

 

同時に今回のSynereoのケースは、典型的な悪質ICOプロジェクトのケースと言えるような気もしますし、むしろこれは氷山の一角なんじゃないでしょうか。特定のどれとは言いませんが、Synereoよりもっとやばそうなプロジェクトもあるような気もします。


自分はICO自体のコンセプトは昔から否定的ではないのですが、このトークンセール、クラウドセール、ICOなどと呼ばれるコンセプトが生まれた時の当初のようなトークンを通した資金調達とコミュニティー形成、オープンソースプロジェクトの開発、のような美しい理想の姿とはかけ離れた、夢を見させて投資家をあおったり、マイルストーンベースではない調達、分散化をうたってのリスク回避など、なんかどんどんひどい状態になってきてるな、と思ってしまいます。


どのプロジェクトは信じられる、信じられないとかそういう話ではなく、もっと根本的にICOのよりよい構造、スタンダードを作らないと今後もこういうケースは減ることはないんじゃないでしょうか。

 

特定のプロジェクトをたたくことが目的ではないですし、例えば単純にワクワクするから、ビジョンに共感するからICOに参加する、みたいな人を否定はしないですが、同時にそのワクワクは人工的に作られたものではないのか、果たしてプロジェクトの中身を理解した上でのものなのか、などのリスクについてももっと考えないと火傷してしまうと思います。


最近アルトコイン全般の価格下落がすごいことになっていますが、上記のようなICOの実態のようなものを理解しておいて損はないでしょう。

 

それでは。

 

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