ビットコインダンジョン2.0

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Stablecoin(価格安定通貨)は過大評価されているのか?

昨日、ビットコイナー反省会で、「安定コイナー反省会」ということで、少し前から注目がかなり集まっていたStablecoinについて、おそらく日本で最もStablecoinに詳しいDRIの稲垣さん と、Enigma反省会にも出演してくれた「西野カナゴールド」さんにゲストに来てもらい、特にDaiとBasisを中心に概要と欠点、今後の予想などを議論しました。

www.youtube.com

 

さて、Stablecoinの分類やそれぞれの仕組みの概要はこちらの動画を見てくれたり、または他にも日本語でもStablecoinについては複数良い記事がすでにあるので、そちらを参考にしてみてください。以下にいくつか紹介します。

 

blockchain.gunosy.io

 

www.slideshare.net

 

individua1.net

 


概要の把握などは反省会動画+上記の記事などを読めばよいと思います。以下に一部放送中にも話した自分の所感を手短にいくつか。

 

Stablecoinは過大評価されてないか?

 

自分が最初にStablecoinに興味を持ったのは今は亡き?Nubitsだったと記憶していますが、確かに当時からStablecoinは面白いことをやっていましたし、注目している人もいました。また、問題も多そうですが、Tehterはトレーダーを中心に広く使われており、市場規模も3000億円を超える規模になってますし実際便利です。

 

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(Nubitsよ、永遠に…)

 

ただし、Stablecoinが特にここまで注目されるようになったのはここ半年くらいな印象で、ICOでの巨額資金調達を成功させたり、有名VCやファンドからの投資を受けたことでDaiやBasisなどは特に注目されています。

 

今回の放送の為に直前にざっと調べはしましたが、自分もそれぞれまだ細かく仕組みや背景の事情を理解してるわけではない、と注意書きをした上になりますが、ただし現在のStablecoinへの期待は若干過熱感があるな、と今回の放送を通しても思いました。

 

100億円以上の資金調達をしたBasisもまだ稼働すらしてないですし、稼働前から価格下落時のBondトークンの購入インセンティブ欠落による価格低下スパイラルや、Sharesトークンの組み込み設計の問題などが指摘出来ると思います。

 

Daiの方はすでに稼働していますが、事前にEtherを供託しなくてはいけない仕組みなので、利用はまだ限定的ですし、またすでに一回Pegが壊れたのを無理やり運営が戻す、みたいなことがあったり、利用率と仕組みの問題点双方で若干期待が先行している感はあります。

 

とはいえ、Daiなどもまだ始まったばっかりですし、課題なども当然認識して今色々議論改善しているところだと思うので、これから伸ばしていく可能性はあるとは思いますが、今の時点ではその他の全てと同じく少し期待されすぎだなー、というのが反省会で話しながら受けた今のところの所感です。

 

巨額の資金調達をしたから優れている、はず…?

 

ここまで期待と注目が膨らんでいる主要因は資金調達金額などなわけですが、多額の資金を集めたプロジェクトだから優れているはずだ、自分が理解不足、読み間違えているだけだ、というような指摘(自省)も出来るとは思います。

 

同時に別に多額の資金調達したから優れているとか、将来的なポテンシャルがある、というわけでは必ずしもないですし、それは過去のICOハイプの推移なども見ると明らかな気がします。重要なのは、お金を入れている人たちはどのように儲けようとしているのか?の部分が重要で、それ次第では実は別にプロダクトが優れているかどうかはあまり関係ありません。要は著名投資家中心に盛り上がっているからすごい、上手く行くとすぐに思わない方がいいでしょう。これは今のStablecoin以外にも言えることなので、次の記事で最近のICOのトレンドと考察みたいな感じで書ければ書こうと思います。


Stablecoinから考えるプロトコルインセンティブの話

 

最後に、今回の放送でも少し話が出て面白かったことの一つに、Stablecoinの経済規模(Marketcap)がどれくらいの大きさに将来的になりえるか?という話です。Daiの場合は事前に供託するタイプのモデルなので、市場規模はそこまで大きくなりえないのではないか、という話も昨日出ましたが、Basisなどシニョリッジシェアタイプだと、発行の裏付けになる供託は必要はないので、理論上は上手くいけばかなり大きな市場規模になりえますし、Basisのサイトとかを見ていると、中央銀行発行通貨を置き換えられるかも、くらいの壮大なビジョンが書いてありました。

 

ただし、Basisは結局Etherのパブリックチェーン上のトークンなので、Ethereumマイナーのインセンティブなども考えると、Etherの市場規模を超えるようなBasisトークン経済圏が形成されるようなことはあり得ないと思います。(あり得るが、そうすると土台のプロトコルが攻撃されたり、まずい事態になりそう)

 

coinandpeace.hatenablog.com

 

実は以前に上記の記事で、トークン化が進むと実は問題だよね、という話を少しだけしていたのですが、現在Ethereumを中心にこういう流れが加速している中、具体的な対策などはそろそろ考えないと、理論上の話ではなく、実際にEthereumのプロトコル自体が攻撃されたりする事態もありえます。先日のMonacoinのBlock withholding attackなど、理論上考えられる攻撃は今後全てされると考えた方が良いので。

(この記事ではビットコインブロックチェーン上でのトークン化について話していますが、Ethereumでも全く懸念は一緒)

 

というわけで、プロトコルセキュリティの面で考えても、Stablecoinがそこまで大きくなるのは必ずしも好ましくないですし、そこまで大きな規模のものになりえない気がします。

 

まとめ

というわけで諸々考えると、やはり若干過剰評価されている感は否めないのと、すごい、と言われて調べてみると、以前とやっていることが本質的には変わらなかったり、などが多い印象を受けました。

 

例えばNubitsなど過去に失敗した事例はありますが、細かい仕組みは違えど、本質的な価格下落ショックの吸収が出来ないとか、運営による市場操作の必要性などの部分は結局変わらないのではないかと。

 

同時に、Ethereumが出てきて、スマートコントラクトによる自動化が出来るようになったことで、中央集権的な取引所や運営への信頼などに(あまり)頼らないで自律的に価格が大部分安定しているコインが出来るようになったのは非常に面白いですし、法定通貨担保型からの大きな進化ともいえると思いました。

 

とりあえず、今回の放送をきっかけにある程度調べたり、興味が少しまた出てきたので、出来る範囲で自分もキャッチアップしたり、また放送したりしたいです。

 

次は今回の記事でも一部話しましたが、最近のICOの変化とその問題点などについて書こうと思います。ちょっと久しぶりになんかブログ記事を書くやる気があるのでw

 

それでは