ビットコインダンジョン2.0

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SegWitが承認されなかったら、ビットコインの価格が急落する論は正しいのか?

年末年始の「ビットコイン To the Moon祭り」から一転、一度1200ドル付近までつけたビットコイン価格が(お馴染みの)急落し、現在850~900ドル辺りをウロウロしている感じです。

 

年間のビットコイン価格予想などに関してもSegWitが通らないことが価格下落の大きな要因という見方が結構多いのですが、実は自分はそれに関して少し疑問に思うところがあります。

もちろんSegWitが通らないことは業界全体で見れば内部分裂や停滞の象徴ともいえますし、マイクロペイメントの技術の進歩が遅れることになるので業界全体としても、ビットコイン価格的にもネガティブ材料であるのは間違いないと思います。しかし、必ずしもSegWitがビットコイン価格に大きな影響を与えない可能性もあるのではないかと、ポジショントーク抜きでも個人的に考えている部分があり、その根拠を簡単に紹介します。

 

1.SegWitなしでも機能する技術が導入され始めている

 
SegWitの導入は実質的なブロックサイズの拡張(ブロックの実質容量の増加)とマリアビリティーの問題の解決という二つの主な効果があり、特に後者のマリアビリティの解決はライトニングネットワークなどのマイクロペイメント技術の実用化にとって非常に重要な変更となります。これについてはすでに日本語でも色んなところで解説されていて、ブログ読者の方のほとんどもすでにご存じだと思います。

 

なので、SegWitが通らないとLightningなどが前進せず、ビットコインはスケール出来なくなり、送金のコストや承認時間の増加などにより、送金ネットワークとして使い物にならなくなり、ビットコインへの自信が喪失し価格も下落、というのが、SegWitが受け入れなかった時の状況に対するざっくりとした懸念だと思います。(コミュニティーの分裂が決定的になり修復不可能ということの象徴という政治的な懸念や要素もありますが、とりあえずここでは無視)

 

ただし、SegWitが通らなかったからと言って、ビットコインが終わるわけでもスケールが不可能になるわけでもなく、すでにSegWitやハードフォークを必要としない様々な技術が提案、開発されています。

 

具体的な取り組みとして最も注目されているのが匿名送金とオフチェーンのマイクロペイメントを同時に実現するTumblebit、またそれ以外にも最近発表されたハードウェアのTrusted execution environmentを利用したオフチェーンマイクロペイメント技術Teechan、などがあります。


この記事ではそれぞれ具体的には説明はしないですが(時間があれば概要くらいは後で別の記事で書いてみるかもしれません)、要はSegWitなしでもビットコインをスケールさせるための技術が考案、開発されており、コミュニティーもSegWitが通らなければ絶体絶命という状況から、SegWitが通らなくてもビットコインを前進させる、というような体制に少しづつシフトして行っているのを感じます。

2.ビットコインを買っているのは誰か?

 

二つ目はかなり単純な話なのですが、SegWitの起動が仮に今年中盤になっても進まなくとも、そもそも今ビットコインを買っている層はSegWitなどを理解してビットコインを買っているのか?ということです。


もちろん市場はバカではないので、SegWitの状況などを織り込んで価格が動いているところもあるとは思いますが、例えば去年年末からのビットコインの爆上がりなどを見ても、これは別にSegWitなどの状況を理解した層が主に買っていたとも思えないです。

何が言いたいかというと、仮にSegWitが通らなかったとしてもインドやベネズエラのような外部の経済の混乱や悪政みたいなものが起こっていれば、SegWitが通ってようが通ってなかろうが、過去の実績やネームバリューからビットコインに注目とお金が集まるような状況が価格を引き上げてもおかしくないのではないでしょうか?

 

3.ビットコインへの需要の正体とは何か?


そして二番とも関連があるのですが、そもそもビットコインへの需要の正体は何か?というポイントです。

 

SegWitが通らないと確かに送金手数料や承認の遅延、その他色々面倒な状況になることが考えられますが、 今ビットコインを買っている人たちは送金手数料が安いから、承認が早いからビットコインを買っているのでしょうか?

 

答えはおそらくNoで、少なくとも現在の時点でのビットコインの主な用途、需要というのは、特に政治や経済の不安定な国からの資金の退避先、送金目的というよりは「デジタルゴールド」としての意味合いがどんどん強くなってきているというのが、業界内の何となくの共通認識だと思います。

実際、インドだけでなく、メキシコなどの国でもビットコインの取引量が急速に増加しているようで、またビットコインの対面取引マッチングサービス、Local Bitcoinの取引量を見ても、発展途上国を中心に取引の増加が確認できます。

 

 

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もし、最近だとインド、ベネズエラなどのニュースのおかげで、資金の避難先、富の貯蔵庫(Store of Value)としてビットコインの認知が今急速に広がっているとしたら、デジタルゴールドに求められるのは送金の安さなどではなく、「変化しないこと」「予測可能であること」の方が重要なのではないかと思います。

 

そういう層は、支払い手段として頻繁に毎日ビットコインを送金するわけではないので、一回の送金手数料が数百円でも確実にビットコインの移動が出来て、安全に保管出来る限り、SegWitの可否の影響は限定的と言えると思います。むしろ、「変わらないこと」「変更が難しいこと」が最重要だとしたら、簡単に仕様の変更が出来ない点というのはある種強みとも言え、富の貯蔵庫としてはSegWitの否決は必ずしも大きな阻害要因にはならない可能性はあります。

 

これは、ハードフォークなどを通してネットワークの成長、技術の進歩を狙うEthereumのEtherなどがStore of Valueとしてはあまり向いていない理由で、意思決定が遅い、変更が利きにくいというビットコインの弱点と普段捉えられる部分が、むしろ優位性になりえることかもしれません。自分がユーザーだとしても、ある日突然Foundationの決定でコンセンサスメカニズムや供給量が変更される可能性がある暗号通貨をStore of Valueとしては選ばないと思います。

 

最悪な状況とは?

 

というわけで、SegWitが通らない=ビットコイン価格の急落とは必ずしも言えないという個人的な見解を述べてみましたが、ただしもちろんSegWitは通った方が全体としてはポジティブなのは間違いなく、むしろSegWitが通らないことでの最大の懸念は何も起きないことではなく、Bitcoin Core派とBitcoin Unlimited派の間でネットワークのハードフォークが実行され、Ethereumが経験したようなビットコインの分裂が起きるようなケースだと思います。こうなるとビットコインにとっても未体験の領域であり、上記のような安定性、不変性こそ価値の源泉であるようなビットコインにとっては、Ethereum以上の大きなダメージになる可能性も否定できません。

 

また、もちろんSegWit通らなくてもビットコインが変な風に変わらない限り需要と価格は上がり続けるよね、という究極の楽観スタンスをとってるわけでもなく、もちろんビットコインの開発が停滞すれば、より分散化され、セキュアで、高性能なアルトコインが出現してビットコインの座を脅かすパターンだって全然ありえますよね。

 

まあでも、SegWit拒否とハードフォークへの危機感やリスクも持ちつつ、必ずしもそこまで悲観的になりすぎる必要も同時にはないかな、というのが今の自分の考えです。

 

読者の人たちはSegWitは今後どのように展開して、どのようにビットコイン価格に影響を与えると思いますか?

 

それでは。

 

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