ビットコインダンジョン2.0

Bitcoin (ビットコイン)やブロックチェーンを技術に詳しくない人たちのために、面白おかしく、そして真面目に語ります since 2014

ビットコインの腐敗が始まっている?

また今回もちょっと玄人向けの内容になってしまいますが。

 

自分も含め、ビットコインを支持する人たちには色んな人たちがいます。単純に金儲けを目指す投機目的の人たち、政府、企業などのコントロールを嫌がる自由主義者の人たち、ビットコインというテクノロジーに魅せられているプログラマーの人たち、などなどです。ちなみに私は自由主義的傾向があるのと、ミクロ経済を大学でも勉強していたので、ビットコインという新たなインセンティブの仕組みが個人の行動に及ぼす影響、みたいのが非常に興味深いと思っています。

 

動機はともあれ、おそらくほぼ全てのビットコイン支持者たちは、少しでもビットコインのことを悪く言われるとすぐに反論してくるでしょう。そりゃそうか。僕自身もビットコインは世界に革命を起こしうる技術だと思っていますし、よくわからない友達に一生懸命説明しようとすることもあります。ただ、確かにビットコイン支持者の中にはある種盲目的にビットコインの可能性と革新性を信じ切っている人たちが多い感もあります。ビットコインが既存の体制のように腐敗することなどありえない、と。

 

しかし、この考え方について、元ビットコインコアデベロッパーで、現在より匿名性の高いプロトコル Dark Walletの開発に携わるAmir Taakiが異論を述べています。元々はTaakiは相当なビットコイン支持者だっただけに、彼のインタビューの内容は少しショッキングで面白かったです。いかに、日本語で要旨を簡単にまとめます。以下、意訳であり、一語一句訳しているわけではないので、原文を確認したい人は記事最後のリンクを参照してください。

 

I=インタビュアー、T=Taaki

 

I   なぜビットコイン(ブロックチェーンテクノロジー)の匿名性にこだわるのか?

A  既存のシステムは一般の人に不利にできており、その点で匿名性は重要である。匿名性を守ることで、税の支払いなど国が押し付ける制約などからも逃れられる。国は結局税金とかを使って国の支配を強めたり、戦争のために金を使ってるに過ぎない。

 

 

I 税金は一般の人を助けるためにも使われるが?

A 確かにその一面もあるが、一般の人に押し付けられる制約などのデメリットなどと比べれば小さなものだ。元々の生活にかかるコストなどが人工的に異常に高く設定されている。結局既存のシステムは大きな社会の一部に人をはめ込もうとしている。人々にとって最も力を与えるには、協力して、自分たちのビジネスを作り、独立した、自発的に行動することだ。もちろんすべての人がこのように行動できるわけではないが、それはコミュニティの中で協力し、助け合えるはずだ。

 

I Dark Walletは匿名性の高さのゆえに、武器商人、テロリストなどに悪用される可能性もあるが?

 

A ルールや規制、司法をベースにしたシステムは今までの枠組みを破壊することなんてできない。より効果の高いツールが存在するなら、使用用途は別とし、人々公開し、彼らの判断に任されるべきだ。

今の社会の全てが根本的におかしい。九時に出社し、五時までオフィスの椅子に座り、意味のないことをやるように命令される、そんなものが人間の価値だとも思えない。リスクをある程度回避するということも必要かもしれないが、今の社会はもともと私たちが持っている人間性を破壊してしまっている。成長するということはリスクや危険を受け入れることではないか。

同時に楽しく生きなくてはならないが、多くの人がそれを放棄している。笑顔をたたえながら、快適を求め私たちは生きているが、本当に幸福だと言える人たちは私たちの中でどれだけいるのだろうか?

 

I Dark Walletをマネーロンダリングツールとしてアピールするのは得策ではないのだろうか?法律的なトラブルに巻き込まれる恐れもあるし、最もイメージのよい宣伝方法でもない

 

A 私はただ自分が正しいと思っていることをやっているだけで、恐怖などはない。不正直にもなりたくはない。私の考え方を他の人にも知ってほしいし、テクノロジーだけの話ではない。実を言うと、テクノロジーそのものには何の意味もない。大切なのはその裏にある理想や、ストーリーだ。

 

ビットコインは分散的で、自由で、個人的な通貨だ。自由への新たな可能性を示してくれた。

しかし、ビットコインの開発はまだ完成してはいない。ビットコインは関連するグループのパワー関係でいくらでも変容しうる。大きく腐敗することだってありえる。

 

I ビットコインはすでに腐敗していると思うか?

A ある意味では、すでにしている。Bitcoin Foundationは開発の方向性を決める中央権力となろうとしている。そして彼らは国やWall Streetなどと協力し始めている。何が起こるかというと、国がBitcoin Foundationに圧力をかけ、開発を恣意的な方向に進めようとするだろう。リードデベロッパーのGavin AndresenはBitcoin Foundationから給料をもらい、彼の周りも大きなビットコイン関連会社で固められている。周りの影響を受けるのは当然だ。

Gavinはビットコインを決済システムの革新ととらえているし、その方向に開発も進めようとしている。ただし、ブロックサイズの制限を引き上げ、より多くのトランスアクションに対応しようとすることは、採掘の中央化をさらに進め、もともとの分散的で、個人的で、自由なシステムというビットコインの理想に反する。

 

I ビットコインは決済システムの革新だとは思わないと?

A 思わない。ビットコインはそれには向いていない。より早く、より安い支払いというのはビットコインを技術的観点から見た時にそぐわない。もしクレジットカードの代替としてビットコインを追及したとしたら、結局既存の体制と何も変わりはしない。そして結局ビットコインがコスト合理化できない結果になるだろう。人々がコーヒーを買うために、マイナーが一生懸命採掘をしているというのはおかしい。

 

ブロックサイズが現状のままでも、ビットコインを決済手段として十分使える。ただし、手数料が少し大きくなるだけだ。少額の支払いのツールとしてではなく、新しい金融パラダイムの背骨的な役割は果たせるはずだ。

 

I ただ結局一般の人たちはそんなことは気にしないだろう。彼らは安くて、素早い決済手段が欲しいだけだ。

 

A 正直、ビットコインコミュニティの中にいる人たちは、ビットコインのマス浸透について気にしすぎだ。どんな手段を使ってでもそこまで辿りつこうと思っている。世界の大半の人がビットコインを受け入れれば、突然世界が変わり、革命が起きると思っている。そんな単純な話ではない。

 

ある種の世界規模の革命が起きる可能性を否定はしないが、一般への浸透が最も重要なことだとは思わない。日常でのビットコイン使用は少なくともビットコインの価格は引き上げるだろうが、ビットコインそのものに利益を与えるものではない。

 

I ではプロトコルは今後どう変わっていくべきだと?

 

A とりあえず少し引いて見た方がいい。ビットコインの根本の部分のバグなどを修正すればいい。今のままでビットコインは上手くいっているのだから。確かにビットコインにはまだまだ問題も多いが、デベロッパーの中では先のことを考えすぎるあまり、プロトコルの変化が与える影響を軽視する傾向がある。目先の課題を解決しようとするあまり、ビットコインが与える自由さ、権力からの解放のような側面を損なってしまう可能性がある。

 

I あなたはこれらの問題に対して、非常に情熱的で遠慮などもしないですが、そのせいで政策決定者との協力を推し進めるデベロッパーとの衝突も絶えなかったようですが?

 

A ただのアホみたいのも中にはいる。政府に守ってもらわないと何もできないんじゃないかと考えていたり。彼らは自分たちは自由主義者だと勘違いしているかもしれないが、公共の支持を得ようと必死になるあまり、ビットコイン自体も変容してしまうことに気づいていない。そして自分たちの意見と一致しない人は、追い出すのだ。

一つの悪行は、より大きな正義のためには必要だと。自分たちの行動は正当化できるのだと。結局こういう考え方が腐敗への道を作るのだ。こういう小さな日常の判断、妥協が、より大きな妥協、腐敗につながるのだ。そして気づいたら、政府や企業のためにしかならないプロトコルが完成している。

 

私たちはこれらの腐敗から逃れる術を見つけなくてはならない。

 

 少し長くなってしまいましたが、どうでしょうか?

 

確かにビットコイン関連のビジネスをしている人たちにとって、一般への浸透というのは目指すべきゴールだと思います。同時に価格の高騰を望むあまりに本来の目的を見失っていないか、そもそもビットコインが一般の人に広く使われることが理想の姿なのか・・・。自分の目的が何なのかを再度冷静に見つめなおす必要があると感じました。

 

また、玄人向けの内容になってしまいましたが、次回はかなりアホな軽い内容のものを書きたいです笑 それでは。

 


'The Bitcoin-technology by itself is worth nothing'; an interview with Dark Wallet front-man Amir Taaki – Bitcoin Magazine