ビットコインダンジョン2.0

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8/1 ビットコインキャッシュ(Bitcoin Cash)ハードフォークについて知っておくべきこと+補足説明

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昨日同名の動画をYoutubeチャンネルの方でアップして、ビットコイン分裂問題のアップデートと、8月1日のビットコインキャッシュのハードフォークについて解説しました。

 

www.youtube.com

 

基本的にはこちらを見てもらえれば、現状の最新アップデート、Bitcoin Cashとは何か、Bitcoin Cashの入手方法、今後予想されるシナリオ、など、必要十分な情報は入ると思いますが、動画でカバーしきれなかったポイントをいくつかこちらのブログでも補足しておきます。

 

・ビットコイン分裂危機の煽りが正確ではないこと

 

これは他の記事や界隈の人からもすでに指摘されていますが、一般メディアなどで今回の分裂問題を根本的に勘違いしているケースがよく見られます。

元々「分裂危機」として、自分が最も懸念していたのは8月1日に予定されていたBIP148/UASFまでにコミュニティー内の同意が形成できず、ネットワークが真っ二つ(もしくは3つ以上)に分裂したり、Reorg(再編成)のリスクなどにより実質ビットコインの送金や取引所での扱いなどが難しくなり、大きな混乱が起きてしまう状況でした。(BIP148については詳しくはこちらでも解説しています。)

 

ただし、8月1日以前にBIP91が無事にアクティベートし、この最悪のシナリオは回避されました。その点では「ビットコイン分裂」と騒ぎたてるような危機はすでに去っていますし、SegWitがメインネットで稼働することもほぼ確定的となり、むしろビットコインにとってようやく追い風が吹き始めた、と見ることも出来ます。

 

 

・ビットコインキャッシュへのハードフォークの意味

 

ではビットコインキャッシュへのハードフォークは何かと言えば、これは今のところ比較的「友好的なハードフォーク」と言えます。

上記ビデオでも説明していますが、分裂時に大きな混乱がないような最低限の対応は考えられており、ビットコインのメインチェーン(BTC)への影響はおそらくほとんどないと思います。

BIP148などによる再編成や分岐リスクと、ビットコインキャッシュのハードフォーク問題がごちゃごちゃにされていますが、今回のハードフォークは分裂危機と言うには遠く、SegWitなどビットコインの開発の方向性を好まない一部の開発者、コミュニティーが勝手に出ていく、くらいのものです。ブランド名の混乱などの懸念材料も確かにいくつかありますが、むしろ二つにネットワークが分かれて自由競争していく、実験の場になるという文脈から見れば悪いことばかりでもありません。

 

・分裂危機騒動はいつ終わるのか?


というわけで、8月1日に予定されているビットコインキャッシュへのハードフォークに関連して、「ビットコイン分裂!」などという煽りみたいなものも一般メディアで出てくると思いますが、「分裂=危険、不安」でも必ずしもないことは理解しておいた方がよいです。特に今回の分裂騒動に関して言えば、特にメディアの低クオリティな報道が目立つなと個人的には思っています。(まあややこしい問題なので仕方ないですけど)

ではいつこの一連の分裂騒動が終わるのかというと、SegWit2xのブロックサイズ引き上げが予定されている11月まで続きます。そしてそれに伴いまた分裂リスクの煽りや、誤報のようなものが出てくると思います。

今回の分裂というのは、

BIP148(8/1予定だった)

ユーザー、マイナーの対立。分岐/再編成リスク⇒回避済み

Bitcoin Cash(8/1)

コミュニティー内の一部の開発者などによるハードフォーク⇒友好的なフォーク。リスクやメインチェーン(BTC)への影響は比較的薄い

SegWit2Xハードフォーク(11月)

SegWit導入後、11月に予定されている関連企業などを中心としたブロックサイズ引き上げのハードフォーク。現在コア開発者のサポートはなく、8月から11月までの今後の議論の焦点となる。(今後の展開や混乱、リスクなどはまだ不明瞭)

 

上記の3つはそれぞれ全く別の「分裂リスク」なのですが、この3つをごちゃ混ぜにして「分裂問題」「危険」などとしてしまう報道は、11月まで色々出てくることが想定されるので、鵜呑みにしすぎないことが重要かと。

 

 

 

11月に一連の問題が決着するまで、こちらのブログや動画などで引き続き解説、フォローしていく予定なので是非フォローしていただければ。ちなみに自分が2週間ほど前にした11月までのシナリオ予想に大部分は沿って今のところ来ている印象ですが、今後予想外の展開がある可能性もあるので、個人的にもある意味楽しみにしています笑

8/1ビットコイン問題の最新アップデート

昨日、今日はビットコインの話だけじゃなく、Parityのマルチシグコントラクトのバグで30億円以上のEtherがハックされる事件もあったりもう色々起こりすぎですね。タイトルの通り「ビットコイン分裂問題」について最新のアップデート動画を出しました。

 

www.youtube.com

 

とりあえず今のポイントはBIP91のシグナル状況と、Bitcoin Cash陣の動き、またBTC1のバグなどですね。今は文字通り数日で状況が大きく変わる状況なので、何か動きがあればまた何か情報を出そうと思います。正直この問題はもう個人的にはお腹一杯なんですが、あとちょっとで大部分の決着がつきそうなので、もう少し頑張ります…。

 

なお、自分が17日に出した予想記事では、「8月1日までにBIP91がロックインし、UASFは起きない。その後も結局BTC1のハードフォーク部分の問題などが指摘されて結局ハードフォークも起きない」という予想をしました。それからすでにいくつか展開がありましたが、今のところまだ自分の想定の範囲内で、上記のシナリオでまだ自分は考えています。

ただし、中には自分の予想をそのまま真に受けているような人もいたようですが、あくまで考えられるシナリオの中で自分が最も確率が高いと考えている展開というだけであり、当然全く別の展開に進んでいく可能性もまだ残っています。その点では最悪の展開なども想定しつつリスクヘッジや準備はちゃんとしておいた方がよいかと。

とりあえずこちらのサイトなどで、BIP91のシグナル状況を追いつつ、マイナー、取引所、コア開発者などからさらにアップデート、アナウンスがあると思うのでそちらを追っていってください。

8/1ビットコイン分裂危機のシナリオ予想 ~8月にビットコインは分裂しません~

 

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もうこの議論正直飽き飽きしてしまって、SegWitやスケールの話、いわゆる8/1ビットコイン分裂問題などについてしばらくスルーしてました。が、さすがにそろそろ無視できないところまで目前に迫ってますし、注目や不安も高まってきているのでついに腹をくくり、改めて先週末色々考えてみました。

特に、田中硬貨研究所のこちらの8/1予想記事はかなり突っ込んでUASFが起きた後の過激な展開を予想をしており面白かったのですが、自分の感覚や視点とは違う部分も多かったので、自分でも今のうちに今後の展開予想をしておきます。なお、今回の記事はわかりやすさは重視しないで、ある程度の予備知識を必要とするどちらかといえば玄人向けに書いておきます。

結論から言えば、「8月1日以前にSegWit2x(BIP91)が発動してUASFは起きない。SegWitが既存のブロックチェーンでも発動し8月中にビットコインが分裂することはない。ブロックサイズ引き上げのハードフォークの審判の日は3か月後の11月まで先延ばされる(そして多分結局HFしない)」

 

簡単に説明していきます。 

前提 みんなSegWitが欲しい。


前提として、すでに今の時点で一部のBU派などを除き、SegWitを導入することはコア開発者、マイナー、関連ビジネス、ユーザーなどにより望まれています。今までSegWitブロックなど強硬な姿勢を示していた中国のマイナー達も、NYAに同意するにあたり、SegWitは安全であると認め、導入を容認しています。どのような形であれ(アクティベーション方法に関わらず)この時点でSegWitがビットコインに近く導入されるのはほぼ確定だと自分は考えています。

 

8/1分裂危機などと言って何をもめているかといえば、本質的には「どうやってSegWitをアクティベート」させるのかの点につきます。

 

SegWit2x(BIP91)、UASF(BIP148)は本質はそこまで変わりはしない

 

細かい説明はしませんが、SegWit2xのSegWit部分(BIP91)は何かと一言で言えば、 「より安全性の高いUASF」みたいなものです。ご存知の通りBIP148は8月1日発動という時期による条件設定があるのに対し、BIP91は80%以上のハッシュレートのシグナルというハッシュレートでの条件設定をしています。ただし基本的な原理やSegWit稼働というゴールは変わりません。BIP91でもBIP148でも最終的に発動するのは同じSegWitのコードです(BIP141)

その意味ではSegWitをみんな欲しいという前提の上では、BIP91もBIP148もある意味では大差はありません。ただしBIP91の方がBIP148より少なくとも今の時点でハッシュレートでの支持も多く(80%以上)SegWit発動の方法としては現時点でより安全(ネットワーク分裂のリスクが低い)な方法だと言えます。 

 

開発者、マイナー、事業者、ユーザーのモチベーション 


すでに前提として述べた通り、ほぼ全ての関係者がSegWitの導入を今の時点で望んでいます。Core開発者はもちろんSegWitを推していますし、UASF(BIP148)の分裂やワイプアウトリスクなどを避けたいマイナー、同じく分裂による混乱やトレード停止などを恐れる事業者(取引所など)、ブロックチェーンの混雑問題と高騰する手数料を解決してもらいたいユーザー…、この時点でSegWitの導入を拒否して8月1日にBIP148が発動して全ての関係者がリスクをとる必要性も本来あまりありません。


唯一SegWitの導入を否定しているのはBitcoin Unlimited派(の一部)です。彼らの中にはBIP148の発動に対抗してBitmainが主導するいわゆるUAHFをすることを望んでいる人もいると思います。ただしUAHFを支持しているスペース内の取引所や開発者はほとんど存在せず、UAHF側にとってもこれは大きなリスクになるので、Bitmainも含め本音は出来るならこの手段はとりたくないんじゃないでしょうか?


まとめると、どうせSegWitを導入するならネットワーク分裂の高いリスクを伴うUASF/BIP148を選択する理由がほぼなく、取引所や関係者なども強力にSegWit2x(BIP91)をプッシュして分裂や混乱などの最悪の状況を防ごうとしているのが現状です。

SegWit2xのコードの準備度と3か月後のHF懸念

上記のような理由で自分は8月1日のUASF発動や分裂のリスクは実はそこまで高くないと思っていて、SegWit2xのBIP141を通してSegWitがロックインして最悪の状態は回避されると予想します。

このSegWit2xのコードが実際にメインネットで稼働するのが7月21日と予定されており、その期日までにある程度以上のクオリティーの「なんとなくそれっぽいもの」が公開されれば、NYAに同意した人たちは計画通りそちらに流れると思います。

 

その時点で、UASFの8/1という時限爆弾の危機は避けられ、同時に審判の日は3か月後のSegWit2xのハードフォークに先延ばしされることになります。(人間心理的に考えてもこういう先延ばし行動/現状のリスク回避効果は強いのでは。)

 

じゃあ三か月後にはどうなるのか、まで今のうちに予想しておくと、何とか8月のUASF危機を避けたものの、ハードフォーク部分のコードのクオリティーなどに課題が指摘され、NYA側の結束が乱れ、最終的には11月のハードフォークが起きないのではないか(もしくはCore主導のハードフォークロードマップに置き換えられる)、と自分は予想します。

 

SegWit2xのポイントして、SegWitがBIP91を通してアクティベートされたとしても、既存のCoreノードとマイナーの大部分がSegWit2xのハードフォークを無視したとしたら、11月に真っ二つに分裂などは起きないのです。確かに11月に本当にCore派(1MBブロックチェーン残留)とNYA派(ブロックサイズ引き上げ)の間でハードフォークする可能性はありますが、8月~11月の間にここはまたごちゃごちゃ論争やドラマが出てきて、結局やっぱり焦ってHFする意味がない、リスクが高すぎる、という判断になると考えています。 もしくは本当にHFするかもしれないですが、まあそれはそれでその時点では避けられないものと考えてしまってもいいかもしれません。分裂危機とか騒がれていますが、本来誰でもいつでもやろうと思えばハードフォークをして「自分のチェーン」を作ることは可能なわけで、ある種常にビットコインは分裂危機に晒されてるわけですし。


結論

 

現状をまとめて振り返って、それぞれの立場のインセンティブを考えると、8月の分裂危機というのはおそらく懸念されているほど可能性は高くないのではないかと考えます。

 

審判の日が11月に先延ばしになるだけという風にも見れますが、SegWitがメインチェーン上で近くアクティベートされる可能性が高く、今回の流れは別にそこまで悲観的になる必要もなく、むしろ待望のSegWit導入がついに実現するということで、大きな前進と見ることすらできます。そして11月のハードフォーク危機が避けられたとしたら(自分の予想)、結果的に分裂なしにビットコインにSegWitが導入されただけ、という何か1周回って気づいたら上手く行ってた、というシナリオになります。

BIP141が間に合わず、UASFが実際に起きると最悪のシナリオもあり得るので、当然そういうリスクも頭に入れといた方がいいと思いますが、自分が状況を再整理して考えた今のところの結論は、自分でもびっくりするくらい恐れることの程ではなかった、という率直な印象です。

7月21日が次の大きなマイルストーンで、この日にSegWit2x側から「ある程度まともなコード」が出てこないと自分の予想は大きく外れることになるので、とりあえずその日を待ちましょう。もしこの時点でSegWit2xは絶望的にダメダメすぎる、となってUASFが避けられない様相になったとしたらまた何か別の予想記事を書きます。(おそらく田中さんのUASFシナリオに近い予想になると思います)

 

もっと詳しく知りたい人は?

上記、それぞれのBIPの仕組みの話などはすっ飛ばしているので、何の話をしているかよくわからない人もいたと思います。

自分は上記の説はソースを探すところから基本自力で調べたのですが、実は大石さんが少し前にしていた予想とほぼ変わらない結果になりました。そして実は大石さんはすでにビットコイン研究所の方でそれぞれのアクティベーションメソッドなどについて2週間以上前に詳細にレポートで解説していました。最後若干宣伝ぽくなってしまいあれですが、こちらのレポートで上記のような話がかなりわかりやすく解説されているので、もっと詳しく知りたい人はそちらを読むことをお勧めします。宣伝というかマジで普通にそっちの方が色々効率もいいと思うので…。