ビットコインダンジョン2.0

Bitcoin (ビットコイン)やブロックチェーンを技術に詳しくない人たちのために、面白おかしく、そして真面目に語ります since 2014

8/1ビットコイン問題の最新アップデート

昨日、今日はビットコインの話だけじゃなく、Parityのマルチシグコントラクトのバグで30億円以上のEtherがハックされる事件もあったりもう色々起こりすぎですね。タイトルの通り「ビットコイン分裂問題」について最新のアップデート動画を出しました。

 

www.youtube.com

 

とりあえず今のポイントはBIP91のシグナル状況と、Bitcoin Cash陣の動き、またBTC1のバグなどですね。今は文字通り数日で状況が大きく変わる状況なので、何か動きがあればまた何か情報を出そうと思います。正直この問題はもう個人的にはお腹一杯なんですが、あとちょっとで大部分の決着がつきそうなので、もう少し頑張ります…。

 

なお、自分が17日に出した予想記事では、「8月1日までにBIP91がロックインし、UASFは起きない。その後も結局BTC1のハードフォーク部分の問題などが指摘されて結局ハードフォークも起きない」という予想をしました。それからすでにいくつか展開がありましたが、今のところまだ自分の想定の範囲内で、上記のシナリオでまだ自分は考えています。

ただし、中には自分の予想をそのまま真に受けているような人もいたようですが、あくまで考えられるシナリオの中で自分が最も確率が高いと考えている展開というだけであり、当然全く別の展開に進んでいく可能性もまだ残っています。その点では最悪の展開なども想定しつつリスクヘッジや準備はちゃんとしておいた方がよいかと。

とりあえずこちらのサイトなどで、BIP91のシグナル状況を追いつつ、マイナー、取引所、コア開発者などからさらにアップデート、アナウンスがあると思うのでそちらを追っていってください。

8/1ビットコイン分裂危機のシナリオ予想 ~8月にビットコインは分裂しません~

 

f:id:coinandpeace:20170717181240p:plain

もうこの議論正直飽き飽きしてしまって、SegWitやスケールの話、いわゆる8/1ビットコイン分裂問題などについてしばらくスルーしてました。が、さすがにそろそろ無視できないところまで目前に迫ってますし、注目や不安も高まってきているのでついに腹をくくり、改めて先週末色々考えてみました。

特に、田中硬貨研究所のこちらの8/1予想記事はかなり突っ込んでUASFが起きた後の過激な展開を予想をしており面白かったのですが、自分の感覚や視点とは違う部分も多かったので、自分でも今のうちに今後の展開予想をしておきます。なお、今回の記事はわかりやすさは重視しないで、ある程度の予備知識を必要とするどちらかといえば玄人向けに書いておきます。

結論から言えば、「8月1日以前にSegWit2x(BIP91)が発動してUASFは起きない。SegWitが既存のブロックチェーンでも発動し8月中にビットコインが分裂することはない。ブロックサイズ引き上げのハードフォークの審判の日は3か月後の11月まで先延ばされる(そして多分結局HFしない)」

 

簡単に説明していきます。 

前提 みんなSegWitが欲しい。


前提として、すでに今の時点で一部のBU派などを除き、SegWitを導入することはコア開発者、マイナー、関連ビジネス、ユーザーなどにより望まれています。今までSegWitブロックなど強硬な姿勢を示していた中国のマイナー達も、NYAに同意するにあたり、SegWitは安全であると認め、導入を容認しています。どのような形であれ(アクティベーション方法に関わらず)この時点でSegWitがビットコインに近く導入されるのはほぼ確定だと自分は考えています。

 

8/1分裂危機などと言って何をもめているかといえば、本質的には「どうやってSegWitをアクティベート」させるのかの点につきます。

 

SegWit2x(BIP91)、UASF(BIP148)は本質はそこまで変わりはしない

 

細かい説明はしませんが、SegWit2xのSegWit部分(BIP91)は何かと一言で言えば、 「より安全性の高いUASF」みたいなものです。ご存知の通りBIP148は8月1日発動という時期による条件設定があるのに対し、BIP91は80%以上のハッシュレートのシグナルというハッシュレートでの条件設定をしています。ただし基本的な原理やSegWit稼働というゴールは変わりません。BIP91でもBIP148でも最終的に発動するのは同じSegWitのコードです(BIP141)

その意味ではSegWitをみんな欲しいという前提の上では、BIP91もBIP148もある意味では大差はありません。ただしBIP91の方がBIP148より少なくとも今の時点でハッシュレートでの支持も多く(80%以上)SegWit発動の方法としては現時点でより安全(ネットワーク分裂のリスクが低い)な方法だと言えます。 

 

開発者、マイナー、事業者、ユーザーのモチベーション 


すでに前提として述べた通り、ほぼ全ての関係者がSegWitの導入を今の時点で望んでいます。Core開発者はもちろんSegWitを推していますし、UASF(BIP148)の分裂やワイプアウトリスクなどを避けたいマイナー、同じく分裂による混乱やトレード停止などを恐れる事業者(取引所など)、ブロックチェーンの混雑問題と高騰する手数料を解決してもらいたいユーザー…、この時点でSegWitの導入を拒否して8月1日にBIP148が発動して全ての関係者がリスクをとる必要性も本来あまりありません。


唯一SegWitの導入を否定しているのはBitcoin Unlimited派(の一部)です。彼らの中にはBIP148の発動に対抗してBitmainが主導するいわゆるUAHFをすることを望んでいる人もいると思います。ただしUAHFを支持しているスペース内の取引所や開発者はほとんど存在せず、UAHF側にとってもこれは大きなリスクになるので、Bitmainも含め本音は出来るならこの手段はとりたくないんじゃないでしょうか?


まとめると、どうせSegWitを導入するならネットワーク分裂の高いリスクを伴うUASF/BIP148を選択する理由がほぼなく、取引所や関係者なども強力にSegWit2x(BIP91)をプッシュして分裂や混乱などの最悪の状況を防ごうとしているのが現状です。

SegWit2xのコードの準備度と3か月後のHF懸念

上記のような理由で自分は8月1日のUASF発動や分裂のリスクは実はそこまで高くないと思っていて、SegWit2xのBIP141を通してSegWitがロックインして最悪の状態は回避されると予想します。

このSegWit2xのコードが実際にメインネットで稼働するのが7月21日と予定されており、その期日までにある程度以上のクオリティーの「なんとなくそれっぽいもの」が公開されれば、NYAに同意した人たちは計画通りそちらに流れると思います。

 

その時点で、UASFの8/1という時限爆弾の危機は避けられ、同時に審判の日は3か月後のSegWit2xのハードフォークに先延ばしされることになります。(人間心理的に考えてもこういう先延ばし行動/現状のリスク回避効果は強いのでは。)

 

じゃあ三か月後にはどうなるのか、まで今のうちに予想しておくと、何とか8月のUASF危機を避けたものの、ハードフォーク部分のコードのクオリティーなどに課題が指摘され、NYA側の結束が乱れ、最終的には11月のハードフォークが起きないのではないか(もしくはCore主導のハードフォークロードマップに置き換えられる)、と自分は予想します。

 

SegWit2xのポイントして、SegWitがBIP91を通してアクティベートされたとしても、既存のCoreノードとマイナーの大部分がSegWit2xのハードフォークを無視したとしたら、11月に真っ二つに分裂などは起きないのです。確かに11月に本当にCore派(1MBブロックチェーン残留)とNYA派(ブロックサイズ引き上げ)の間でハードフォークする可能性はありますが、8月~11月の間にここはまたごちゃごちゃ論争やドラマが出てきて、結局やっぱり焦ってHFする意味がない、リスクが高すぎる、という判断になると考えています。 もしくは本当にHFするかもしれないですが、まあそれはそれでその時点では避けられないものと考えてしまってもいいかもしれません。分裂危機とか騒がれていますが、本来誰でもいつでもやろうと思えばハードフォークをして「自分のチェーン」を作ることは可能なわけで、ある種常にビットコインは分裂危機に晒されてるわけですし。


結論

 

現状をまとめて振り返って、それぞれの立場のインセンティブを考えると、8月の分裂危機というのはおそらく懸念されているほど可能性は高くないのではないかと考えます。

 

審判の日が11月に先延ばしになるだけという風にも見れますが、SegWitがメインチェーン上で近くアクティベートされる可能性が高く、今回の流れは別にそこまで悲観的になる必要もなく、むしろ待望のSegWit導入がついに実現するということで、大きな前進と見ることすらできます。そして11月のハードフォーク危機が避けられたとしたら(自分の予想)、結果的に分裂なしにビットコインにSegWitが導入されただけ、という何か1周回って気づいたら上手く行ってた、というシナリオになります。

BIP141が間に合わず、UASFが実際に起きると最悪のシナリオもあり得るので、当然そういうリスクも頭に入れといた方がいいと思いますが、自分が状況を再整理して考えた今のところの結論は、自分でもびっくりするくらい恐れることの程ではなかった、という率直な印象です。

7月21日が次の大きなマイルストーンで、この日にSegWit2x側から「ある程度まともなコード」が出てこないと自分の予想は大きく外れることになるので、とりあえずその日を待ちましょう。もしこの時点でSegWit2xは絶望的にダメダメすぎる、となってUASFが避けられない様相になったとしたらまた何か別の予想記事を書きます。(おそらく田中さんのUASFシナリオに近い予想になると思います)

 

もっと詳しく知りたい人は?

上記、それぞれのBIPの仕組みの話などはすっ飛ばしているので、何の話をしているかよくわからない人もいたと思います。

自分は上記の説はソースを探すところから基本自力で調べたのですが、実は大石さんが少し前にしていた予想とほぼ変わらない結果になりました。そして実は大石さんはすでにビットコイン研究所の方でそれぞれのアクティベーションメソッドなどについて2週間以上前に詳細にレポートで解説していました。最後若干宣伝ぽくなってしまいあれですが、こちらのレポートで上記のような話がかなりわかりやすく解説されているので、もっと詳しく知りたい人はそちらを読むことをお勧めします。宣伝というかマジで普通にそっちの方が色々効率もいいと思うので…。

一般的な常識はまだ暗号通貨業界の非常識です。

今年に入ってから日本では特により一般層に近い人たちが、大量に取引所に登録して暗号通貨を購入しているようですが、かなり意識や文化が違うと感じています。中にはアカウントをハックされてお金を盗られてしまうような人たちも少なからずいるようですが、一般的な常識はこの業界の非常識で、初心者が当たり前のことを言ってると思ってたのに、なぜか馬鹿にされたり笑われたりすることもあるという「非常識」なケースをいくつか紹介します。ただし、注意喚起の狙いもありますが、大体ネタなのであまり真に受け過ぎない方がいいかもしれません笑

 

1.ハック被害者のはずが、自己責任だと周りから非難 

最近よくあるのが、取引所のアカウントに不正アクセスされ(おそらく複数サイトで同じパスワードを使い回しているため)取引所のアカウントからハッカーに勝手にコインを引き出される、という事故です。

これに対して取引所に補償などを求めても相手にしてくれないということで、「○○取引所はひどい。絶対にもう使わない方がいい」「責任とれ」「最悪」などと言っている人たちもいるようです。一般常識的に考えると自分のお金が盗まれたり、クレジットカードが不正利用されたりしたら、銀行やクレジットカード会社に補償や対応を求めるのは当然で、それが出来ないなんて最悪だ、ということだと思います。気持ちはわかります。

 

ただこれ、大抵は二段階認証など最低限のセキュリティ対策を自分でやってなかった人が被害になることが多く、被害者で慰めてもらうどころか、「パスワード使い回して、二段階認証もしてないなら悪いのは自分。取引所のせいにするな」など、被害者だと思っていたら、なぜかさらに周りに追い打ちをかけられるということもあるんですよね…。

さすがにお金を盗られてしまった人をさらにフルボッコにする必要性もあまりないですが、技術的にも文化的にも自己責任という概念が基本の暗号通貨業界では、自分のセキュリティ対策がよろしくない状態でコインの盗難にあい、それを責任転嫁するのはNGです。

むしろ今までだと自分の過失でコインを盗られたり、取引所に置くリスクを説明されているのに大量のお金を置いといて、取引所がハックされたり持ち逃げされたりすると、やられた方も含め「笑」的な雰囲気すらありました。

 
参加者の平均リテラシーが下がってきているため(それを一般化とも言うのでしょうが)、取引所、その他の事業者なども含めてサービスの改善などは必要だと思いますが、暗号通貨業界の現状を端的に表現すれば以下のようになります。

f:id:coinandpeace:20170628202413p:plain

 

 2.「信頼」とか「安心」の一般概念は通じない

一般的には○○さんは信頼できるとか、○○という会社は実績があり安心できるなど人や企業のイメージや実績で「信頼できるか」「安心できるか」という判断をしている人が多いと思います。暗号通貨業界ではこれはNGで、信頼か安心できるか、などというのは「ソースは公開されているのか」「カウンターパーティーリスクや倒産リスクはないのか」など、コードや設計により信頼が出来るか、というか「信頼する必要がないかどうか」がネチネチ議論されます。圧倒的に「信頼する必要がない」>>>「信頼できる」信仰です。

これは業界全体がまだ発展途上期であることや、詐欺なども本当にたくさん溢れているからという理由もありますし、また一般に信頼されている大企業でも怪しいところで提携したりなどの事態も案外たくさんあるからです。ともかく、「○○さんだから信じられる」というのは暗号通貨界隈のカルチャーとはあまり親和性がよくありません。(まあ最近はトラストレスな人たちの方が少数派の気もしますが)

後は一般的には信頼度の高いはずのスーツをスキャムとか風説の流布をする人もいます笑

 

3.資産がどんどん減ってもへらへら


今年に入ってから一種のバブル相場が続き、どんなコインを買ってもすぐに簡単に数倍に値上がりしていくような状況がしばらく続きました。この波にたまたま上手く乗って自分のポートフォリオを眺めながら、「しめしめ」していた人もいると思いますが、当然実態や裏付けのない急激な価格上昇は永遠には続かず、その内大きく値が崩れる時が来るのは避けられません。実際すでに何回か大きなふるい落としのような値下がりもあり、数日前にほぼ全てのコイン価格が3割以上値下がりするような事態もありましたね。

 

しかし一日に三割資産価値が減ろうが、すでに経験的にもメンタル的にも慣れてしまっている人たちがたくさんいて、含み益が1日で数千万円分減ろうがもはや「きれいなナイアガラが見れた~」などと喜んでいるような人たちも多い始末です笑

 

短期的な価格変動で消耗している新規参入者も多いと思いますが、色々な意味でこの界隈で短期で消耗してても共感が得られなかったりするのでご注意を。

 

f:id:coinandpeace:20170628204022p:plain

 

4.話が違う?自分で調べていないのが悪いだけ 。

昨日Stellarというコインの無償配布について、Stellar運営側とPoloniexという取引所でのミスコミュニケーションが原因(のよう)で、Poloniexに預けていたビットコイン分のコインが無料でもらえるとStellarからアナウンスされていたのに関わらず、Poloniexは事前にそのようなことは感知してなかったと直前に告知し、無料コインをもらえると期待していたPoloniexユーザーがある意味で騙される、みたいなエピソードがありました。

一般的な観点から考えれば、「StellarはもっときっちりPoloniexに確認すべきだった!」とか「Poloniexも事前にわかってたはずなんだから、対応する気がなかったならもっと早く告知しておけよ、最悪!」みたいに感じている人もいたようです。

 

ただし、暗号通貨業界のカルチャー的には、公式に「やります」と宣言していてなかったら、勝手に何かを期待するのはユーザーが悪いし、むしろ「やります」と言ってても、結局出来なかったり時間かかったり、というのは日常茶飯事です。上記のようなケースでも、Poloniexが公式にアナウンス出してないのに勝手に期待するのが悪い、みたいな考え方の人が多いと思います。(自分もそう思います)

他にもウォレットプロバイダーへの過度の期待など色々ありますが、何か業界内への企業への過度な期待感みたいなのもあるなーと思います。先に言っておきますが、Poloなんて信頼するようなものではありません笑(自分も使いますけど)

 


というわけで何か色々と大きな文化の違いと若干の危うさを感じる今日この頃です。

最終的には今までいた人たちが老害のごとく駆逐されて、全く違う世界が広がるようになるのはわかりますが、「自己責任」「自分できっちり情報を確認すること」というのをおろそかにしてしまう人たちにはまだまだ危険な状態でもあるということは是非理解してもらいたいなーと思います。技術の特性的にも「誰かを盲目的に頼る」のではなく、「自分で管理する、責任を取る」というメンタリティーへの移行がもう少し必要だと思います。じゃないと、HYIPや詐欺コインに騙された人たちが、今度は詐欺ICOに騙される、という永遠のループが待っているだけかもしれませんので…。

 

それでは。